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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-3:腸内細菌叢の働き[effects of intestinal bacterial flora]

腸内細菌叢の働き[effects of intestinal bacterial flora]
① 新生児期から成人に至る腸内細菌叢の動態
 生後はじめて排泄される胎便は,以前は無菌と思われていたが,近年の研究では胎児期にLactobacillus gasseriなど何らかの種となるべき細菌が母体から受け継がれていることがわかっている(参考文献4-3-1).それをもとに生後2~3日で大腸菌や連鎖球菌が出現し,1週間ごろにはビフィズス菌が最優勢菌となり全体の90%を占めるようになる(参考文献4-3-2),(参考文献4-3-3).1~2歳ごろになると離乳によりヒトの腸内細菌叢はグラム陰性嫌気性桿菌優勢のパターンに近づき,ビフィズス菌は減少し,全体の10%程度となる.3歳ごろまでにBacteroides属とFirmicutes門が優勢となって比較的安定し,成人の腸内細菌叢へと変化していく(参考文献4-3-3).

腸内細菌叢の機能
 腸内細菌叢は宿主の栄養代謝,防御機構,免疫機構の発達に大きく寄与している.食物の消化・吸収の促進や,免疫グロブリンの産生促進,外来微生物の定着や増殖への抵抗,難消化性炭水化物の分解による短鎖脂肪酸の産生,各種ビタミン(ビタミンB1,B2,B6,B12ビタミンK葉酸パントテン酸,ニコチン酸,ビオチンビタミンE)の合成,アミノ酸の合成,脂質代謝や一次胆汁酸から二次胆汁酸への代謝(腸肝循環)に働く.したがって腸内細菌叢の破綻は免疫機能の低下のみならずビタミン合成も阻害し,腸肝循環による内外物質を合理的に利用する生体システムにも影響を及ぼす(参考文献4-3-4).

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