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第10章各疾患の栄養管理

10-1:周術期の栄養管理

■周術期の生体反応

A. 手術時の代謝の変化
 手術は疾患の治療のために行われるものではあるが,同時に生体にとっては侵襲でもある.侵襲時には,適切な生体反応が生じることで,創傷治癒を進め,感染防御能を高め,重要臓器の機能を維持する必要がある.その生体反応を進めるうえで,エネルギーを生み出すために,また組織修復や白血球など細胞増殖のための材料を供給するために,栄養が必要になる.エネルギー源はグリコーゲンの分解,筋タンパクの崩壊によって生じるアミノ酸からの糖新生,脂肪の分解によって供給される.アミノ酸は筋肉や腸管など臓器から供給される.したがって,大手術,緊急手術などの大侵襲時には,大量の筋タンパクが失われ,脂肪の分解も進む.

B. 栄養不良の影響
 手術前から栄養状態が不良な場合は,適切な生体反応のために必要な栄養の貯蔵量が減少している.体脂肪は膨大なエネルギー貯蔵庫として機能するが,栄養不良では減少しているし,体タンパクの大きな貯蔵庫である筋肉も栄養不良では減少している.したがって,術前からの栄養不良は術後経過に大きな影響を及ぼし,感染症をはじめとする術後合併症の増加,創傷治癒の遷延,ADLの回復遅延などが生じることから在院日数が延長し,予後も不良となりうる.

■周術期栄養管理の重要性

A. 術前栄養管理の意義
 待機手術の場合は,術前から栄養状態を評価し,低栄養のリスクがある場合には,1~2週間の栄養管理を行う必要がある.経口摂取が可能であるが摂取量が少ない場合には,その理由を明らかにし,食種の変更や栄養剤の経口的な補充投与を考慮する.腸管が使用可能であるが,嚥下障害があるため誤嚥のリスクが高い場合は,経鼻的に挿入した胃チューブから経腸栄養を行う必要がある.腸管が使用不可能な場合や,激しい下痢や腹部膨満などが生じ経腸的な栄養投与だけでは十分な栄養を投与しきれない場合は,静脈栄養が必要となる.
 近年は,末梢ラインからでも,低濃度糖加アミノ酸輸液と脂肪乳剤を併せて投与することで,1日1,000 kcal, アミノ酸60 gの投与が可能となったため,経口的・経腸的な栄養投与の不足分の補充が容易に行えるようになった.しかし,静脈栄養だけで栄養管理を行わなければならない場合は,この方法では必要栄養量を満たすことができない.いたずらに栄養管理を続けても,逆に栄養不良が進行する.このような場合は中心静脈カテーテルを留置し,中心静脈栄養を開始しなければならない.

B. 術後栄養管理の実際
 術後1週間以内に経口摂取で必要な栄養量を満たすことができる場合は,術後に特別な栄養管理は必要ない.しかし,1週間経過しても経口摂取が不十分な場合や進まないと予測される場合,あるいは術前から栄養不良を合併している場合は,術後早期から積極的な栄養管理が必要である.消化器手術であっても,術後栄養管理の基本は早期の経口摂取再開と不足分の経腸的な栄養投与である.経口・経腸的に投与量が不足する場合は,静脈栄養管理が必要になる.ただし,経口・経腸・静脈栄養いずれであっても,術後2~3日までの早期に必要栄養量すべてを無理に投与する必要はない.徐々に栄養投与量を増やし,5~6日目くらいを目途に必要量を充足できるようにする.
 栄養投与量は,エネルギー:25~30 kcal/kg体重/日,タンパク質(アミノ酸):1.2~2 g/kg体重/日, 脂肪:投与エネルギーの20~30%を目安とする.

C. 血清アルブミン値の意義と栄養療法
 血清アルブミン値は栄養状態評価に頻用されるが,術前に脱水が存在する場合や術後に炎症反応が生じている場合,大量の輸液が投与される場合などでは有効な評価基準とならない.アルブミンは膠質浸透圧を維持し血管内ボリュームを保つために重要であるが,アルブミン製剤の投与は栄養療法の代替になりえない.体内におけるアルブミン合成は,肝機能が正常であれば外科手術後でも維持されているため,タンパク質やアミノ酸を外部から投与することで1日当たり15 g程度のアルブミン合成が期待できる(参考文献10-1-1).

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