感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が体の中に入り込み増えていき、発熱、下痢、咳など体によくない症状を引き起こす病気です。新型コロナウイルス感染症や冬場のインフルエンザ、水ぼうそうやはしかなども感染症の仲間です。ワクチンが開発されている感染症は、予防接種を受けている方も多いと思いますが、誰もが取り組める備えが「免疫力を高めること」。感染症対策の一つとして、栄養補給と乳酸菌を活用してみませんか?
外科医としてばかりでなく、感染症対策や免疫学にも精通し、臨床現場に活用していらっしゃる昭和大学の千葉正博先生に、感染症への備えについてお訊ねしました。
「低栄養が免疫低下の原因に?」「生きた乳酸菌より、加熱殺菌した乳酸菌がいいって本当?」「乳酸菌は数が多い方が効果があるの?」など、さまざまな疑問にQ&A形式で、わかりやすくお答えします!
- Q1“感染症対策の基本”を教えて!
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A
備えとして、「免疫力を高める」ことも大切です。「栄養」にも目を向けて。
新型コロナウイルス感染症の長期化が予想される中、外出控え、3密回避(密集・密接・密閉回避)、換気、咳エチケット、手洗いといった「感染源を排除・遮断」する行動は、感染症対策の基本としてよく耳にしますよね。
一方で、忘れがちなことに「免疫力」があります。ウイルスや細菌などの感染源を排除する行動をしていても、免疫力が低下すると体内にいる感染力の弱い常在菌などが抑えきれなくなり、体調を崩してしまうことになりかねません。感染症は誰もがかかる可能性があるので、もしかかっても重症化させないために、感染症への備えとして免疫力を高めておくことが大切です。
そのためには、その人に必要な栄養をしっかり摂ることも忘れてはいけません。日本でも欧米でも、栄養と健康についての研究をしている専門的な学会が、栄養が健康状態に与える影響について提言をしています。 - Q2「免疫」って、簡単に言うと、なに?
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A
免疫とは、「自分ではないもの」を判断し、排除する機能を指します。
体内に侵入してきた病原体(感染症の原因となるウイルス、細菌、カビなど)や体内で発生するがん細胞などを「自分ではないもの」と判断して闘い、排除する機能のことを「免疫」といいます。
生まれつき持っている「自然免疫」と、病気にかかったり予防接種を受けたりすることで備わる「獲得免疫」の2種類に分けられます。免疫細胞が働くことで、私たちの健康は守られています。
- Q3どんな人が、感染症にかかりやすいの?
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A
高齢の方で、基礎疾患をお持ちの方は要注意です。
糖尿病、肝硬変、腎疾患などの基礎疾患をお持ちの方、がんの治療中の方や大きな手術を受けた方は、免疫機能が低下しやすく感染症リスクが高いといわれています。さらに下のグラフが示すように、免疫力は20代をピークに、年とともに低下が見られ、高齢になるほど感染症にかかりやすくなるといえます。
また、高齢者に多くみられる「食欲低下」や「低栄養」の状態が続くと、免疫低下が起こる点も見逃せません。
参考:からだと免疫の仕組み(日本実業出版)
- Q4食事を食べていれば「低栄養」の心配はないんでしょ?
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A
食事はバランスが大切。食べていても「低栄養」になることがあります。
低栄養は、エネルギーをはじめ、必要な栄養素が足りない状態のことを言い、高齢者に多く見られます。以下のようなことが当てはまる方は、食事を食べているといっても、必要な栄養素をバランスよく摂れておらず、「低栄養」または「低栄養予備軍」の可能性があります。
参考:オムロンヘルスケア株式会社HP 健康・医療トピックス
- Q5高齢者が「低栄養」になると、困ることがある?
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A
「低栄養」はフレイル(虚弱)の原因。免疫力も低下し、感染症に…。
最近では、高齢者の「フレイル(虚弱状態)」という概念が注目されています。フレイルとは、健常から要介護へ移行する中間の段階といわれ、高齢者の筋力や気力が低下し、介護が必要となる一歩手前の状態を指します。運動不足のほかに、「低栄養」が大きな原因の一つと考えられています。
フレイルが改善されないと、体を動かしたり体を作ったりするためのエネルギーだけでなく、免疫細胞が働くためのエネルギーも足りなくなってしまうため、免疫力も低下します。栄養が満たされていれば、かかりにくい風邪などの感染症も、栄養不足だとかかりやすくなります。
体調が悪いときほど「食欲がない」「食べることが負担」と感じ、低栄養を招きやすくなるもの。栄養状態が悪くなると、負の連鎖により、体力も気力も失われ、免疫低下が加速していきます。そんなときは、少ない量で必要な栄養素を補える栄養補助食品を活用※して、低栄養状態にならないよう、工夫してみましょう。
※栄養補助食品は事前に医療従事者に相談して取り入れましょう。
- Q6感染症に「薬」が効かないことがあるの?
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A
「薬剤耐性菌」が問題になっています。
感染症に対して使われる薬剤、特に抗生物質などが効かない細菌のことを「薬剤耐性菌」といいます。感染症の治療法は、国内では抗生物質などの医薬品が中心です。しかし過剰な投与は薬剤耐性菌を生み、それを抑えるための薬剤の開発と新たな薬剤耐性菌のいたちごっこが指摘されています。現在のペースで抗生物質が使用され続けると、薬剤耐性菌による死亡者数は、2050年に1,000万人に上るといわれており、がんでの死亡者数を超えると予想されているのです。今後、過剰に薬に頼る治療法が見直されてゆくでしょう。
世界の死亡者数推計
参考:英国薬剤耐性に関するレビュー委員会第一次報告(オニールレポート2014)
- Q7「免疫力」と「腸」が深く関係しているって、本当?
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A
「腸」は、体内最大の免疫器官です。
私たちは口から食べ物をとり入れ、胃や腸を通り、肛門から便として排出しています。口からは食べ物以外にも、さまざまな細菌やウイルスが侵入してきます。「腸」はこれらの外敵にさらされる機会が多いため、「免疫機能」が備わっており、免疫に関わる細胞の約7割が「腸」に集中しています。腸は体内で最大の免疫器官であり、この腸の健康を保つことが、免疫力を高めるカギといえます。
- Q8「腸内細菌」って、健康とどんな関係があるの?
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A
健康の秘訣は、腸内細菌のバランスです。
腸内細菌は、私たちの体で消化できない食品を分解するときに発生する毒素に反応したり、ビタミンを合成したり、体のために様々な役割を果たしています。ヒトの腸内には1000種類、約100兆個の腸内細菌がおり、体に良い働きをする善玉菌が20%、悪い働きをする悪玉菌が10%、優勢な方に味方する日和見菌が70%のバランスで構成されていることが健康な状態を保つ秘訣といわれています。これらの細菌は、「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼ばれる種類ごとの集合体を作っており、それを花畑に見立てて「腸内フローラ」と呼ぶこともあります。
腸内では私たちが口から取り入れた食事(例えば食物繊維など)を奪い合い、善玉菌と悪玉菌が勢力争いをしています。善玉菌というと「乳酸菌」、「ビフィズス菌」などが有名ですが、この善玉菌が日和見菌を味方につけて優勢な状態に保たれていると「腸が健康な状態」、つまり免疫力が高められた健康状態といえるのです。
- Q9腸内細菌叢のバランスが崩れると、どうなるの?
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A
免疫系疾患、炎症性疾患の発症や悪化に関係します。
腸内細菌環境は、母乳の摂取などを通して生まれたときから次第に形成され始めます。乳幼児では、まだ腸内細菌環境の変化を自力で改善する力が発達していませんが、成人になると比較的安定してきます。一方、高齢になるにつれ、疾患に対する抗生物質の使用、歯や口の中の状態の悪化による悪玉菌の増加、食欲減退や食の偏り、消化管機能の低下などが原因で、腸内細菌環境の変化に対応する力が低下し、2:1:7のバランスが崩れやすくなります。腸内細菌叢のバランスが崩れ、細菌の種類や数が変化することを「ディスバイオシス」といいます。
ディスバイオシスにより腸内細菌により作り出されるビタミンなどの栄養素も減ってしまうため、衰弱、疲労など、健康が害される一因にもなります。また、アレルギー、肥満症、炎症性腸疾患、がん、心血管疾患など、免疫系疾患や炎症性疾患の発症に密接に関連があるこの「ディスバイオシス」が「低栄養」を引き起こすことも報告されており、健康な状態を保つためには、腸内細菌叢のバランスを調整することが重要といえます。
腸内細菌のバランス
参考:健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
- Q10医療現場で注目されている「免疫力低下の対策」はある?
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A
最近、「免疫力を高める乳酸菌」が注目されています。
お通じの改善などを目的に、普段の食事に「乳酸菌」を取り入れている方も多いと思いますが、乳酸菌には、腸の免疫細胞を刺激して、「免疫力を高める働き」があることをご存じでしょうか。
2020年8月、全国の病院・介護福祉施設の栄養士ら113人を対象に、「コロナ禍における医療・介護現場の現状と栄養の必要性に関する実態調査」が実施されました。その中で、免疫力を高める注目の栄養素トップ5として、①ビタミン、たんぱく質②ミネラル③エネルギー④水分⑤乳酸菌があがりました。栄養のプロフェッショナルである栄養士の先生方も数ある栄養素の中で「乳酸菌」に注目しているというのは興味深いですよね。いま、医療の現場でも、その効果に期待が集まっており利用が進んでいます。免疫力の低下が気になる方は「乳酸菌」の働きにも着目してみてはいかがでしょうか。
Q. 栄養学の見地から、免疫力を高めるために、摂取が必要な栄養素
を教えてください(重要視するものを5つまで)。(回答数:113)「コロナ禍における医療・介護現場の現状と栄養の必要性に関する実態調査」より
- Q11「免疫力の低下」が気になる人の「食事の工夫」は?
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A
「乳酸菌」をはじめ、腸内細菌叢のバランスを整える食品をとりいれましょう。
腸内細菌叢のバランスを安定させ免疫力を保つためには、善玉菌を増やす必要があります。そこで、乳酸菌などの善玉菌そのものを取り入れる「プロバイオティクス」、食物繊維など善玉菌の餌になるものを取り入れる「プレバイオティクス」、それらをともに取り入れる「シンバイオティクス」などが活用されています。
さらに近年では、感染症の予防や治療に、「薬」ではなく免疫力を高める「食品」を効果的に用いることが推奨されており、新たに「バイオジェニックス」が医療現場で注目されるようになってきました。EPA、DHA、βカロテン、ポリフェノールという栄養成分の名前を聞いたことがあると思います。これらは腸内細菌の助けがなくても、直接免疫細胞を刺激することで免疫力を高めることができます。ナタデココやキムチ、さらに加熱殺菌した乳酸菌(死菌)もバイオジェニックスの一つといわれています。
参考:国民の栄養白書2020年版(日本医療企画出版)
- Q12乳酸菌は、「生きている菌」が良いんでしょう?
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A
実は「生きている菌」のほとんどが胃酸で死滅し、腸内に定着しません。
「生きている菌の方が効く」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は乳酸菌やビフィズス菌を生きている状態でとり入れても、胃酸や腸液(胆汁・膵液)でほとんどが死滅してしまいます。
- Q13「生きている乳酸菌」と「加熱殺菌した乳酸菌」の違いは何?
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A
「加熱殺菌した乳酸菌」は安定した効果が得られ、小腸で免疫機能を高めます。
「加熱殺菌した乳酸菌」は、「生きている乳酸菌」のように胃酸や腸液の影響を受けないため、その効果が安定しています。その働きは、小腸で免疫機能を高めること。常温で保存できるため、食品や飲料への応用や保管もしやすくなります。
- Q14乳酸菌の有効成分ってなに?
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A
免疫細胞を刺激する成分は、乳酸菌の「細胞壁」や「核酸」部分です。
有効成分である乳酸菌の「細胞壁」や「核酸」が腸まで届けば、「生きている乳酸菌」でなくても、免疫細胞を刺激し活性化させることができます。加熱殺菌処理により圧縮され、効果が安定した乳酸菌は、その成分を効率よく利用することができます。
参考:ベルム社提供
- Q15「加熱殺菌した乳酸菌(死菌)」って安全なの?
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A
医療現場で、予防接種のワクチンに利用されています。
医療現場では「死菌」が利用されています。それは、皆さん誰もが経験したことのある「予防接種」。例えば、インフルエンザウイルス、肺炎球菌、B型肝炎、Hib(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)など、聞きなじみのある予防接種のワクチンに「死菌」が活用されています。とても日常的な医療現場で利用されています。
- Q16免疫力を高める乳酸菌選びのポイントを教えて!
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A
同じ量なら“乳酸菌数が多い”ことです。
乳酸菌の有効成分は、菌表面の細胞壁と核酸部分にあるため、その有効成分の量が多いほど効果は高まります。ということは、乳酸菌の「数」が多ければ多いほど、免疫効果が高まるということです。
同じ容量で比較した場合、サイズの小さな乳酸菌の方がより多くとり入れることができるため、乳酸菌をたくさん摂取するには、菌体サイズの小さな乳酸菌が適しています。 - Q17サイズの小さな乳酸菌ってどんなものがあるの?
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A
サイズが小さく、球菌のカタチをした乳酸菌「E.フェカリス」が注目されています。
免疫力を高める効果が期待されている乳酸菌に、「E.フェカリス」があります。乳酸菌には「Y」のカタチや「棒状」のカタチをしているものが多いのですが、この乳酸菌はまるいカタチの「球菌」で、「サイズが小さい」ことが最大の特長です。代表的な善玉菌のひとつ、ビフィズス菌と比べると、5分の1程度の小ささです。
乳酸菌のカタチとサイズ
参考:国民の栄養白書2020年版(日本医療企画出版)
- Q18乳酸菌「E.フェカリス」は、どうして免疫力を高められるの?
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A
サイズが小さいため、「大量の乳酸菌が腸内に届くから」です。
「E.フェカリス」は、もともと小さいうえ、加熱殺菌処理により圧縮され、さらに小さくなっています。サイズが小さいことにより、小腸のすき間から大量にとり込まれて、腸内にある多くの免疫細胞を刺激します。それによって活性化した免疫細胞が全身に移動し、ウイルスや細菌の侵入を防ぎ、侵入してきた敵と闘ってくれるのです。
免疫力を高めるメカニズム
参考:CURRENT REVIEW No.1(ジェフコーポレーション)
- Q19乳酸菌「E.フェカリス」はどこで効果を発揮するの?
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A
主に、ライバルの少ない「小腸の上部」で活躍しています。
腸内細菌は「小腸」よりも「大腸」に多く存在しているのですが、E.フェカリスはライバルの少ない小腸の上部で活躍します。そのため、効果が現れやすい傾向があります。
部位別の腸内細菌数
参考:国民の栄養白書2020年版(日本医療企画出版)
- Q20乳酸菌「E.フェカリス」を効率よく摂取する方法はある?
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A
1本125mLサイズに、6,000億個を配合したドリンクがあります。
「E.フェカリス」1mg当たりに含まれる菌の数は、通常10億個であるのに対し、加熱殺菌処理した「E.フェカリス」の場合では500億個になります。その数、50倍。ギュッと圧縮して、食品や飲料に配合することができるので、少量で効率よく補給できます。一度にたくさんの量を飲んだり、食べたりできない方が多い医療現場では、飲む人の負担が少なくなることから、1本125mLに、6,000億個もの乳酸菌「E.フェカリス」を配合したドリンクの利用が進んでいます。
- Q21E.フェカリス配合のドリンクは、どんな人におすすめ?
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A
忙しくなる前など「負担が増えそうなとき」に、飲んでおきましょう。
免疫低下が気になる方、高齢の方、体調に自信のない方はもちろん、これから仕事や介護、勉強で忙しくなるなど、「体への負担が増えそうだな…」と思ったときには、事前に飲み始めておくことをおすすめします。
私の病院でも、免疫力を高め維持する目的で、E.フェカリス配合飲料を日常的に取り入れるようにしています。日々の生活習慣にとり入れて、免疫力が低下する前から活用するとよいでしょう。
まとめ
普段、何気なく目にする乳酸菌配合の食品。乳酸菌に、いろいろな種類や働きがあることをおわかりいただけましたか?
免疫力が低下したり、体調が悪くなったあとから、元に戻そうとしても大変です。先手を打ち、免疫力が低下する前に、腸から健康を保っていきましょう。
