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第10章各疾患の栄養管理

10-15:呼吸不全と慢性閉塞性肺疾患(COPD)

■呼吸不全と栄養障害

 慢性呼吸不全呼吸不全)を呈する主な基礎疾患として,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),肺結核後遺症,間質性肺疾患などがあげられる.COPD患者では肺結核後遺症や間質性肺疾患と比較し高率に体重減少が認められる.肺結核後遺症では,呼吸不全症例で体重減少が高度であるが,COPDでは呼吸不全に陥る以前から特徴的かつ高率な栄養障害が認められる.わが国の外来受診患者の約30%でBMIが20 kg/m2未満の体重減少が認められ,Ⅲ期(重症)以上では約40%,Ⅳ期(最重症)では約60%と重症ほど高率な体重減少が認められる(参考文献10-15-1).一方,軽症ないし中等症患者では体重減少が重症度とは独立した予後因子となる.

■COPDにおける栄養障害

A. 栄養状態
 日本呼吸器学会によるCOPD診断と治療のためのガイドライン第5版(参考文献10-15-2)では推奨される栄養評価項目を必須の項目,行うことが望ましい項目および可能であれば行う項目として段階的に記載している(表Ⅰ)注).
COPD患者では年齢をマッチさせた健常対照と比較し,体重などの身体計測値はすべて低下しており,体成分分析ではfat mass(FM),fat-free mass(FFM)がともに減少している.FMの減少は軽度の体重減少(80%≦%IBW<90%)から認められ,FFMと骨塩量の減少は中等度以上の体重減少(%IBW<80%)で明らかとなる(参考文献10-15-1).簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment Short-form:MNA®-SF)は急性増悪の予測因子にもなる(参考文献10-15-3).
内臓タンパクでは血清アルブミンの減少例は少ないが,血清プレアルブミン,レチノール結合タンパクなどのrapid turnover protein(RTP)が減少し,血漿アミノ酸分析では,分岐鎖アミノ酸(BCAA)の減少によるBCAA/芳香族アミノ酸(AAA)比の低下を認める.
注:権利関係の都合により表Ⅰは不掲載となります.書籍にてご参照ください.

B. 栄養障害の機序
 COPD患者では安定期においても,安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure:REE)の増大に反映される代謝亢進が認められ,栄養障害の主因と考えられる(参考文献10-15-1).
REEの増大は主として,閉塞性換気障害や肺過膨張などによる呼吸筋酸素消費量の増大に基づいている(図Ⅰ).重症化に伴う食事摂取量の減少がエネルギーインバランスを惹起し,レプチンや炎症性サイトカインが摂食抑制因子として関与することも示唆されている.また,摂食促進因子であるグレリンの血中濃度は栄養障害の進行に伴い上昇するが,十分な代償効果は得られない(参考文献10-15-1).この場合,エネルギー源として脂肪とともに筋タンパクも利用され筋量は減少する.その結果,呼吸筋力や換気効率が低下し,さらなるREEの増大要因となる.
加えて異化因子である炎症性サイトカインやノルエピネフリンの血中濃度が,成長ホルモンインスリン様成長因子-1(insulin-like growth factor-1:IGF-1)などの同化因子に対して優位となっている.このような複合的な要因が関与して“pulmonary cachexia”といわれる特徴的なタンパク・エネルギー栄養障害が惹起される.
 COPD患者では血中のTNF-α(tumor necrosis factor-α)やIL-6(interleukin-6)などの炎症性サイトカインやhs-CRP(高感度C-反応性タンパク)の上昇に反映される全身性炎症が栄養障害をはじめとするさまざまな全身の併存症の発症要因となっている(参考文献10-15-2).

C. COPDとサルコペニア
 FFMの減少により呼吸筋力や運動耐容能は低下し,健康関連QOL(health-related quality of life:HRQOL)の悪化につながる.さらに,FFMは体重よりも特異性の高い予後因子となることが知られている.
 サルコペニアとは,「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で,身体機能障害,QOL低下,死のリスクを伴うもの」と定義されている(参考文献10-15-4). これまでCOPDにおいてFFMの減少として捉えてきた病態を今後はサルコペニアという疾患概念から解釈していく必要がある.海外ではCOPDにおけるサルコペニアの合併頻度は約15~30%と報告されており,高齢かつ気流閉塞が重症であるほど合併率が高い(参考文献10-15-5). 高齢者COPD患者が多いわが国では海外よりも高率であると推測されるが実態は明らかではない.
図Ⅰ

図Ⅰ●COPDの栄養障害と病態との関連

 サルコペニアは運動耐容能や身体活動性の低下,骨粗鬆症(参考文献10-15-6),予後の悪化と関連しており,栄養管理としてサルコペニア対策を重視すべきである.FM,FFM,骨塩量などの体成分の変化と画像所見に基づき分類したメタボリックフェノタイプが提唱されている(参考文献10-15-7).Cachexia(気腫型)は筋萎縮,骨粗鬆症,脂肪量の減少を伴い,Obesity(非気腫型)は皮下・内臓脂肪の増加,動脈硬化病変と心血管疾患のリスクを伴い,Sarcopenic obesity(病型と関連なし)は筋萎縮,内臓脂肪増加,動脈硬化と心血管疾患のリスクを伴う.COPDの栄養療法においては,これらのフェノタイプを考慮した個別化治療が求められつつある.

D. COPDの栄養治療
 COPD患者は安定期には外来で管理されており,栄養治療は食事指導と経口栄養補給療法が中心となる.エネルギーや栄養素の摂取量が不足している場合は是正を行う.高エネルギー,高タンパク食の指導が基本であり,投与エネルギー量は実測REE の約 1.5 倍,基礎代謝量の約1.7倍を目標とする(参考文献10-15-1).タンパク源としてはBCAAの含有量が多い食品が勧められる.脂肪はエネルギー効率が高いため,可能な限り摂取する.体重や食事内容の目標を設定し,体重や食行動を記録するself-monitoring も有用である.栄養指導における行動療法では,栄養士,医師,看護師などが参加したチーム医療が望ましい.

図Ⅱ

図Ⅱ● 経口栄養補給療法における経腸栄養剤の選択

 食事摂取量を増やすことが困難な場合や,中等度以上の体重減少が認められる場合には,経腸栄養剤や栄養補助食品による栄養補給療法を考慮する(図Ⅱ).経腸栄養剤はエネルギー源が炭水化物主体と脂肪主体の栄養剤に大別される.総エネルギーが過量でなければ,炭酸ガス産生量には差がないため,著しい換気不全がなければ,十分なエネルギー摂取を優先させる.筋タンパクの異化抑制やタンパク合成促進を目的としたBCAA強化栄養剤や,全身性炎症の制御をめざしたn-3系脂肪酸強化栄養剤やカルニチン,ホエイペプチド含有栄養剤などの有効性が示されている.BCAAのなかでも,ロイシンはタンパク合成を制御しているmTOR(mammalian target of rapamycin)を活性化することにより筋タンパク合成への強いシグナルとなっている.近年では,ロイシンの中間代謝物であり,mTORをより特異的に活性化するβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)含有栄養剤の有効性も注目されている.オクタン酸の含有量が多い栄養剤では,摂食促進作用のあるグレリンの血中レベルの上昇が報告されている.
 栄養補給療法を単独で施行した場合の有効性は限定的であり,運動療法の併用が推奨されている(参考文献10-15-8).しかし,サルコペニアを伴うCOPD患者における高強度の運動療法は全身性炎症を増強し異化作用に働くことが示唆されている.一方,適切な強度による運動療法は全身性炎症を抑制し,骨格筋タンパクの維持や栄養障害の対策として有効と考えられる.低強度運動療法と栄養療法のコンビネーションセラピーが最も有効なサルコペニア対策である.タンパク同化作用と抗炎症作用を有する栄養素材の併用が注目される.

■急性呼吸不全の栄養治療

 慢性呼吸不全の急性増悪や急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)などに代表される急性呼吸不全では,肺の障害だけではなく全身の消耗を伴い,積極的な栄養管理が必要となる.また,栄養状態は人工呼吸器からの離脱の成否において重要な規定因子となる.
 このような病態の場合は,静脈栄養より可及的すみやかな経腸栄養の開始が勧められる.経腸栄養剤のエネルギー量については結論が得られていないが,早期に25 kcal/kg体重/日以上の投与を推奨する根拠はなく,500 kcal/日程度の少量経腸栄養に対する強い反対根拠はない(参考文献10-15-9).
 高脂肪組成栄養剤(プルモケア®)は,脂質の呼吸商が低値のため動脈血炭酸ガス分圧の上昇を防ぎ,1.5 kcal/mLと高エネルギーであるため水分負荷を回避できる.しかし,その臨床的効果は十分には検討されていないため,ASPENのガイドラインにおいては推奨されていない(参考文献10-15-10).
 ARDSではアラキドン酸の代謝物であるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性メディエーターの増加が急性肺障害に関与している.さらにIL-1,IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインによって異化亢進が惹起される.このような病態に対してn-3系脂肪酸(主としてエイコサペンタエン酸)やγ-リノレン酸,抗酸化ビタミン類を強化したオキシーパ®の有効性が検討されている.オキシーパ®は臨床的には肺酸素化能の改善,人工呼吸日数の短縮や死亡率の改善をもたらし,早期投与が支持される可能性があるが,現時点で一定した有効性は確立されていない(参考文献10-15-9).

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