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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-3:バイオジェニックス[biogenics]

バイオジェニックス[biogenics]
 バイオジェニックスとは,Mitsuokaら(参考文献4-3-17)が提案した概念で,直接,あるいは腸内細菌叢を介して産生された生体反応修飾物質を含む食品成分が該当する.具体的な条件としては免疫強化,血圧降下・コレステロール低下・整腸作用,抗腫瘍効果などの生体調節・生体防御・疾病予防・回復・老化制御に働く成分物質を含む各種生理活性ペプチド,植物ポリフェノール,DHA(ドコサヘキサエン酸),EPA(エイコサペンタエン酸),ビタミンなどを含む食品成分が該当する.また乳酸菌の死菌成分もバイオジェニックスとしてあげられる.摂取された乳酸菌はその生死にかかわらずパイエル板のM細胞に取り込まれ抗原提示細胞によって情報が伝達されることによりIL-12やTNF-αなどのサイトカインが生成されて免疫機能が活性化する.しかし生きた乳酸菌(生菌)は腸管内で凝集する性質があるため,分子が大きくなりすぎてパイエル板に取り込まれないことがある.そのため乳酸菌の死菌を用いることでパイエル板に取り込まれる菌数を増やし,免疫機能を向上させることができると考えられる.MRSA感染マウスに対する加熱殺菌した乳酸菌(E. faecalis)がMRSA感染後の生存率を改善させたという報告があり(参考文献4-3-18),その他の感染症も含めて臨床応用が期待されている.
 2018年度の診療報酬改定で抗菌薬適正使用支援加算が新設されたように,近年は薬剤耐性菌感染症の低減を目的として抗菌薬を適正に使用することが推進されている.そのためにも,乳酸菌の死菌体をはじめとするバイオジェニックスを効果的に用いることで腸管免疫を賦活化し,感染症の発症を予防する対策が注目されている.

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