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キーワードでわかる臨床栄養

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第10章各疾患の栄養管理

10-12:短腸症候群

■短腸症候群の病態

 短腸症候群(short bowel syndrome:SBS)は,「何らかの原因による小腸広範切除のため吸収面積が減少し,水分,電解質,主要栄養素,微量元素,およびビタミンなどの吸収が障害されるために生じた吸収不良症候群」と定義される(参考文献10-12-1).成人では,上腸間膜動・静脈血栓症やクローン病,広範囲にわたるイレウスに対する小腸広範切除により発症することが多い.SBSの吸収不良は一次的には小腸表面積減少の結果であるが小腸通過時間の短縮も影響しており,栄養素及び水分の吸収がともに障害されている.吸収障害の程度は残存小腸の長さと,回盲弁・大腸が残っているか,に影響される(参考文献10-12-2).

■栄養管理

 小腸広範切除後の臨床経過は3期に分類され,各々の時期の臨床病態に応じた栄養管理が要求される(表ⅠA, B)(参考文献10-12-3),(参考文献10-12-4).

A. 第Ⅰ期
 第Ⅰ期(術直後期)では,術後2~7日間の腸管麻痺に続いて腸蠕動の亢進が起こるために頻回の水様下痢をきたす.

表ⅠA

(文献10-12-3より引用)


表ⅠB

(文献10-12-4より引用)


水分・電解質を中心にすべての栄養素の喪失を引き起こしやすいため,多くの患者が1カ月以上の中心静脈栄養(TPN)を要する.
通常の栄養状態の患者では理想体重にもとづいて,目標40 kcal/kg体重/日程度を投与する.アミノ酸は1.0~1.5 g/kg体重/日,脂質は総熱量の20~30%程度とし,総合ビタミン薬,微量元素製剤も投与する.
水様下痢に対しては通常長期にわたるコントロールを要し,ロペラミド(ロペミン®)などの止痢薬や麻薬系の止痢薬の投与が行われる.また,H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬も胃液分泌を減らして下痢を抑えるのに有用である(参考文献10-12-5).

B. 第Ⅱ期
 第Ⅱ期(回復適応期)では,残存する小腸の機能が代償期に入り吸収能も改善するため,水様下痢の回数は徐々に減少することが多い.この時期では下痢に注意しながら経腸栄養を開始する.海外の報告ではいわゆるアミノ酸吸収能の面から成分栄養剤(elemental diet:ED)や消化態栄養剤のメリットはあまり認められないため,一般的な半消化態栄養剤(low residue diet:LRD)の使用を勧めているが,本邦では,アミノ酸吸収能の面のみならず,脂肪吸収障害に伴う下痢の発生を抑える面からも,脂肪含有量の少ないEDから開始することが多い.ただし,EDは浸透圧が高いために下痢などの腹部症状を引き起こしやすく,導入時には希釈したり,投与速度をゆっくりにするなどの工夫が必要である.また,EDでは必須脂肪酸欠乏に陥る危険もあるので,定期的に経静脈的に脂肪乳剤を投与する必要がある.状態をみながら,可能ならばEDからLRD,さらに経口摂取に移行していく.

C. 第Ⅲ期
 第Ⅲ期(安定期)では,残存腸管の代償レベルはほぼ最大限に達しており,下痢症状はコントロールされている.経腸栄養や経口摂取を進めていきながら,TPNから離脱することがこの時期の目標である.TPNからの離脱には一般的に,小児では残存小腸20~30 cm以上,成人では残存小腸40~60 cm以上が必要と考えられている.EDやLRDの投与が必要な症例では在宅経腸栄養(home enteral nutrition:HEN)が,TPNから離脱できない症例では在宅静脈栄養(home parenteral nutrition:HPN)が導入され,社会復帰を目指すことになる.経口摂取が可能となった症例では,正常な大腸を有する患者には複合炭水化物が多く,かつ脂肪が少ない食事(高炭水化物・低脂肪食)を,さらに尿路結石(シュウ酸結石)の発生を予防する目的で低シュウ酸塩食を指導する.また,可溶性食物繊維や短鎖/中鎖脂肪酸も大腸を有する患者には有用なエネルギー源である.微量栄養素(ビタミン,電解質,微量元素)の欠乏に陥らないよう定期的に検査を行う(参考文献10-12-6).

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