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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-3:短鎖脂肪酸[short-chain fatty acid]

■短鎖脂肪酸[short-chain fatty acid]
 腸内細菌による発酵産物の主要なものは短鎖脂肪酸である.短鎖脂肪酸とは酢酸,プロピオン酸,酪酸などの低分子のモノカルボン酸を指し,大腸粘膜細胞の主要なエネルギー源となる.また同時に大腸内pHを低下させ,Clostridium属などの腐敗菌の増殖を抑制して腸内細菌叢の改善作用を有する.
 酢酸やプロピオン酸などは短鎖脂肪酸受容体GPR109Aを介して抗炎症作用を呈する.また短鎖脂肪酸は,回腸や上行結腸に存在するL細胞の短鎖脂肪酸受容体GPR43/GPR41を刺激し,腸管上皮増殖促進因子(グリセンチン)および神経ペプチド(GLP-2)の分泌を促進することで大腸や小腸粘膜を増殖させる.これによりバクテリアルトランスロケーションの発生が抑制されると考えられている(参考文献4-3-20),(参考文献4-3-21).またGLP-1も分泌されることでインスリン分泌も促進される.この結果,PYYが分泌される.これが視床下部の受容体に作用して食欲を抑えて食べる量を減らすため,短鎖脂肪酸には過度な摂食を抑える働きがあるとされる(図1).
2-8:短鎖脂肪酸[short-chain fatty acid:SCFA](https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-8/keyword7/)も参照.

図1●短鎖脂肪酸の作用
水溶性食物繊維は腸内細菌によって資化され,短鎖脂肪酸を生成する.
短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞や宿主のエネルギー源になる.
また大腸管腔内のpH の低下をきたし,腸内細菌叢のバランスを改善する.
さらに腸管内の受容体に結合することでさまざまな腸管の器質的,機能的改善をきたす.

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