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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-3:腸内細菌と栄養

■概論

 成人の腸管内には人体の菌の70%以上が生着し,約1,000種,100兆~1,000兆個の細菌が宿主と利益を共有していて,その大部分は結腸に存在している.腸内細菌は,エネルギーの供給促進,病原菌の腸内増殖とその定着の防止,正常な腸管免疫の維持や促進に重要な役割を担っている.腸内細菌の構成の割合は,近年では出生前の状態,出生方法,出生後の哺乳状況や環境,その後の食事・栄養摂取の影響などを受けて生涯を通じて変化する.
 腸内細菌叢を良好な状態に維持することは,免疫の基盤となる生体防御能を適正に保持するうえで重要である.腸内細菌叢は,抗菌薬の使用時や,偏った食事や病原体感染などによって宿主の免疫能が低下することでdysbiosisを生じる.このような腸内細菌叢を良好な状態に維持するためのものとしてプロバイオティクスプレバイオティクスの有効性が示されている.プロバイオティクスは生体にとって有益な作用を示す特定の生菌であり,具体的な属としては乳酸菌などが属するLactobacillus属やビフィズス菌などのBifidobacterium属などが利用されている.プレバイオティクス乳酸菌やビフィズス菌などの餌となるもので,これによりプロバイオティクスの効果が促進する.
 また,資化されて生成増加した短鎖脂肪酸(酪酸,酢酸,プロピオン酸)によっても,大腸の機能の多くは維持されている.短鎖脂肪酸は,大腸上皮細胞のエネルギー源(酪酸),宿主のエネルギー源(酢酸,プロピオン酸)となり,また大腸管腔内pH低下をきたし腸内細菌叢の改善を促すだけでなく,下部小腸や結腸に存在するL細胞が短鎖脂肪酸受容体の刺激によりGLP(glucagon-like peptide)やPYY(peptide YY)を放出することで,腸粘膜の増殖や代謝亢進などの作用をきたす.一方,上皮細胞の増殖や粘液の分泌が不十分な場合には,粘膜のバリアー機能が低下しているので,細菌や毒素が腸管内から体内に侵入するバクテリアルトランスロケーションをきたす.
 このような状態の変化しやすい腸内細菌叢を維持するために,前述のプロバイオティクスプレバイオティクスを併用したシンバイオティクスがさらなる有効性を認めている.
 また,直接,あるいは腸内細菌叢を介して産生された生体反応修飾物質を含む食品成分(バイオジェニックス)は,免疫強化,血圧降下・コレステロール低下・整腸作用,抗腫瘍効果などの生体調節・生体防御・疾病予防・回復・老化制御に寄与する効果をもたらす.バイオジェニックスには死菌成分も含まれており,抗原がM細胞から取り込まれ抗原提示されることにより,サイトカイン産生を促進することで免疫賦活効果をもたらすとされる.

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