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キーワードでわかる臨床栄養

第6章栄養療法の実践

6-3:各種栄養素の必要量の算出方法

■各種栄養素必要量決定の手順

 三大栄養素のタンパク質,脂質,炭水化物の摂取量の決定は,総エネルギー必要量を決めてから,それぞれの栄養素にエネルギー量を分配する方法によって行われる.
 まずは,タンパク質の必要量を決定する.平常時のタンパク質必要量は成人で0.8~1.0 g/kg体重/日で,総エネルギー消費量(total energy expenditure:TEE)の10~20%程度である.適切な栄養管理のためには脂質と炭水化物のエネルギーとの割合も考慮する必要がある.この割合を示す指標をNPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)という.タンパク質は,手術や熱傷,感染症などの侵襲期には,その程度に応じて必要量が増す.侵襲の程度に応じて1.2~2.0 g/kg体重/日とする.また,腎不全などでは,病期に応じてタンパク質量を制限する必要がある.タンパク質の1 gあたりの熱量は4 kcalとして,タンパク質のエネルギー量を算出しておく.
 タンパク質必要量が決定されれば,次に,脂質必要量を算出する.脂質のエネルギー比率は20~30%程度で設定する.脂質の1 gあたりの熱量を9 kcalとして計算し,必要となる脂質の重量(g)も算出しておく.
 最後に,総エネルギー消費量からタンパク質と脂質のエネルギー量を除した,残りのエネルギーを炭水化物に充てる.炭水化物必要量は一般的に総エネルギー必要量の50~60%を基準とする.炭水化物は1 gあたりの熱量を4 kcalとして計算し,必要となる炭水化物の重量(g)も算出しておく.
 このようにして三大栄養素の必要量を算出する.
水分必要量は,水分出納から算出するが,実際の臨床では簡便な方法で算出する場合も多い.
 多量ミネラル,微量元素(微量ミネラル),ビタミンの必要量は,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」や米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)のガイドラインなどを参考に決定する.特に,微量元素とビタミンは,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の1日推奨量を基準に投与するのを原則とする.

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