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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-8:水溶性食物繊維[soluble dietary fiber]

水溶性食物繊維[soluble dietary fiber]
水溶性食物繊維には,ペクチン質(果物,野菜),グアガム(マメ科植物),アルギン酸ナトリウム(海藻),難消化性デキストリン,難消化性オリゴ糖,糖アルコールなどが含まれ,これらは水に溶けやすい性質をもつ.
主な生理機能の1つに脂質代謝の改善があげられる.これは,多糖類がその粘性により胆汁酸と結合して,遠位回腸における胆汁酸の吸収が低下し,胆汁酸の糞便中への排泄が増加し,その補充のために肝臓の血漿コレステロールの取り込みが増えることで,結果的に脂質代謝の改善が図れるというメカニズムが考えられている.
次に,糖質代謝の改善があげられる.そのメカニズムの1つに,胃における排泄時間の延長と水溶性食物繊維の粘性が消化管内でゲルを生成し,グルコース吸収を抑制することがあげられる.一方,βグルカンは,グルコースの吸収抑制により,インスリン,コレシトキニン,GLP-1などの放出を抑制する機能を有している.
ペクチン,難消化性オリゴ糖などは大腸内まで達し,腸内細菌叢により発酵され,六炭糖または五炭糖となり,解糖系を経てピルビン酸から短鎖脂肪酸(SCFA)である,酢酸,酪酸,プロピオン酸などが生成される.
一方,メタンガス,水素ガス,炭酸ガスなども産生され,その一部は,菌体成分に取り込まれるが,大部分は,腸ガスや大腸から吸収された後に肺に運搬され,呼気ガスとして排泄される.
SCFAが産生されることで,腸内環境は,ビフィズス菌や乳酸菌の増殖の促進とともにクロストリジウム属菌,大腸菌の増殖抑制が起こり,正常な腸内環境が維持するプレバイオティクスとしての機能を発揮する.
また,SCFAのなかで乳酸,コハク酸,吉草酸は腸内細菌に再利用されるが,酢酸,酪酸,プロピオン酸は再利用されずに,結腸粘膜により吸収される.酪酸は,結腸の上皮細胞のエネルギー源の70%を供給し,プロピオン酸は,肝臓に吸収され,肝臓での脂質やグルコース代謝に利用され,酢酸は,末梢組織のエネルギー源として利用される.これまで,大腸でのミネラル吸収の役割については認識されてこなかった.
しかし,最近の研究では,非消化性オリゴ糖のような非消化性炭水化物が大腸で発酵することでカルシウム,マグネシウム,鉄の大腸での吸収が高まることが報告されている.また,SCFAが全身性に作用することで,好中球や制御性T細胞のアポトーシスや遊走を介して,炎症抑制へ関与することも示唆されており,短鎖脂肪酸の生理機能の重要性が高まっている.表1には主なSCFAの生理機能を示した.
表1
なお,食物繊維が腸内細菌の発酵によって産生されるエネルギー量については,国際連合食糧農業機関(FAO)が支持している2.0 kcal/gが現実的な数値となっているが,個々人の腸内細菌叢や糞便の結腸通過時間によって異なる可能性がある.

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