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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-16:腸管内バクテリアルトランスロケーション,エンドトキシントランスロケーション[intestinal bacterial/ endotoxin translocation]

■腸管内バクテリアルトランスロケーション,エンドトキシントランスロケーション[intestinal bacterial/ endotoxin translocation]
 1960年頃から静脈栄養のみで栄養状態を維持・改善しようとする試みが行われ,Dudrickらは上大静脈から高張グルコースやアミノ酸を含む溶液注入を子犬で試み,発育成長を得たことを発表し,中心静脈内投与により生きて行くうえで必要なエネルギーの完全投与が可能となり,TPN(中心静脈栄養)による栄養療法は飛躍的に進歩した(参考文献10-16-3).しかし,TPN管理も腸管を使わないという点では絶食状態であり,絶食は消化管粘膜障害のリスクファクターといわれ,約10日間の絶食により,消化管粘膜は脱落し,腸内細菌やその毒素が血中・リンパ組織中へ移行(バクテリアルトランスロケーション:BT)して,敗血症用症状を起こす原因となりうる(参考文献10-16-4).EN(経腸栄養)は消化管を使用するという点で,腸管を使用する生理的な栄養方法であり,BTの予防という観点からも理想的な栄養補給法である.がん末期患者はさまざまな抗がん剤治療を行っていることが多く,5-FU系をはじめとする抗悪性腫瘍剤の副作用として,腸管の粘膜障害が発生することが知られている(図1)(参考文献10-16-5~10-16-7).抗がん剤による腸管粘膜の透過性の破綻がマウスを用いた動物実験において観察されており8),マウスにおける抗悪性腫瘍剤治療モデルにおけるBTも報告されている(参考文献10-16-9).絶食+抗がん剤投与で,激しい腸管粘膜障害が惹起され,その結果として,BTに引き続く全身炎症反応が生じることも知られている(図2)(参考文献10-16-1).このため,高残渣配合により腸粘膜の萎縮を防ぎ,腸炎改善,術後侵襲経腸栄養の治療を行うための製剤もあり,がん化学療法における腸管粘膜障害の予防に経腸栄養剤の応用が期待される. 図1

図1●化学療法でみられる腸管炎症(TPN施行例)
化学療法中は,可能な限り経口あるいは経腸栄養が望ましい
A:小腸のほとんどは萎縮している
B:腸管粘膜の高度脱落を認め敷石状粘膜を呈する
C:小腸に多発穿孔を認める

図2

図2●化学療法でみられる腸管炎症(TPN施行例)
(文献10-16-1より引用)

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