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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-5:カルシウム(Ca)[calcium]

カルシウム(Ca)[calcium]
 血清基準値:9.2~10.7 mg/dL
 カルシウム(Ca)は,生体内に最も多量に含まれる無機質であり,成人男性で30 mol(1,200 g),成人女性で23~25 mol(930~1,000 g)となっており,その99%はリン酸カルシウムとして骨質の構成成分として存在している.その他は,細胞内液に約1%,細胞外液(血液中)に0.1%含まれている.血液中のCaは,pH 7.4の条件下で47%程度がアルブミンやグロブリンなどのタンパク質と結合した状態で存在し,48%がCa2+,約5%がリン酸カルシウム,クエン酸カルシウムとなっている.Caは,骨格に存在することで生体を保持するための十分な強度を有しているほか,細胞分裂・分化,抗体やホルモンの放出,酵素の賦活作用,感覚神経や神経細胞の興奮などに重要な役割を果たしている.
 摂取されたCaは,小腸上部で活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)の関与のもとで成人では25~30%が吸収され,残りは糞便中に排泄される.腎尿細管では,濾過液中の99%が再吸収され,生体内に取り込まれたほぼ同じ量が尿中に排泄される.
 血清Ca濃度は,パラトルモン(PTH)やビタミンDの関与によってきわめて厳格に恒常性が維持されている.例えば,血清Ca濃度が低下すると,PTH,活性型ビタミンDの関与により腸管吸収率を増加させるが,長期にわたるCa欠乏時には腸管吸収の増加にも限界があるため,PTHは骨吸収を促進させ,血清Ca値を維持することになる.
「日本人の食事摂取基準(2020)」では,1歳以上では,性別および年齢階級ごとの参照体重をもとにして体内蓄積量,尿中排泄量,経皮的損失量および吸収率などの要因を加算して推定平均必要量とし,個人変動を10%とし,推奨量を示している.例えば,50~64歳男性では,推定平均必要量614 mg/日,推奨量737 mg/日となっている.一方,過剰症の1つにミルク・アルカリ症候群があるが,近年,名称をカルシウム・アルカリ症候群(calcium-alkali syndrome)に変更することが提唱されている.

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