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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-12:短腸症候群と短鎖/中鎖脂肪酸[short/medium chain fatty acid]

■短腸症候群と短鎖/中鎖脂肪酸[short/medium chain fatty acid]
 大腸では腸内細菌叢により複合炭水化物が短鎖脂肪酸(short chain fatty acid:SCFA)に代謝され,エネルギー源(約500 kcal/日)として供給されうる.SCFAは複合炭水化物のみならず,タンパク質や可溶性食物繊維からも腸内細菌による発酵で作られる.SCFAは大腸粘膜から容易に吸収され,便中に失われるはずであった炭水化物エネルギーをサルベージ利用することに役立つ.また,SCFAは大腸のナトリウム,水分の吸収を促進する(4-3:短鎖脂肪酸[short-chain fatty acid](https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch4-3/keyword9/)、2-8:短鎖脂肪酸[short-chain fatty acid:SCFA](https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-8/keyword7/)も参照のこと).
 中鎖脂肪酸(medium chain triglycerides:MCT)は吸収も早く,また燃焼においてもミトコンドリア内に取り込まれる際にカルニチンを必要としないなどの利点がある.MCTもSCFAと同様に大腸から吸収されうるので,SBS患者においては有利な栄養源である.一方,長鎖脂肪酸(long chain fatty acids:LCFA)は小腸で吸収されるが,大腸からは吸収されない.しかし腸管のadaptation(順応)を促す効果はMCTよりもLCFAの方が大きいため,LCFA過剰による脂肪性下痢を引き起こさないよう注意しながら摂取を進めることが望ましい.なお,近年では小腸切除後6カ月以上経った安定期では,特に脂肪摂取制限は必要ないと考えられている.

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