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  4. 血栓性静脈炎[thrombophlebitis]

7-1:経静脈栄養法の適応のキーワード

[4] 血栓性静脈炎[thrombophlebitis]

 PPNにおいて最も問題となる副作用は静脈炎(図7)と血管痛である。これらの副作用を軽減しながら、可能な限り多くのエネルギーを投与するための検討が行われてきた。その対策には、さまざまなものがある(参考文献7-1-4)。
① 末梢静脈ルートの確保
 原則として、上肢の静脈の関節にかからない部位に、必要最小限の太さのカテーテルを挿入することが薦められている。PPNを実施する場合には、金属針でできている翼状針等は使用すべきではない。これは、腕を動かすことによって針先が血管壁を損傷し、投与輸液が血管外に漏出することを予防するためである。
② 輸液の選択
 末梢静脈から投与可能な糖濃度としては、一般に10%が限界とされている。現在、12.5%グルコース濃度の製剤も使用されている。症例にもよるが、静脈炎発生頻度は高い。いたずらに糖濃度が高い方が多くのカロリーが投与できると考えるのではなく、静脈炎の発生頻度、どのような輸液組成を必要としているのか、などを考えて輸液を選択すべきである。アミノ酸を投与しない糖電解質液だけの場合は、一般にPPNとは呼ばない。また、カロリー投与量を増やす目的で脂肪乳剤が投与される場合もあるが、アミノ酸を投与せずに脂肪乳剤を併用しても、栄養学的には意味がない。
③ 輸液の浸透圧、pH
 静脈炎を予防するためには、輸液の浸透圧比は3以下とすべきである。また、pHも生理的pH(7.4)に近い輸液を用いるべきである。輸液の浸透圧が高いと、血栓性静脈炎を引き起こし、発赤のみならず、感染徴候も出現する場合がある。すなわち、PPNとしてできるだけ多くの栄養素を投与しようとすると、その分、輸液の浸透圧が高くなるので、静脈炎発生予防とどれだけのカロリーが投与できるかについての検討が行われてきた。一般に、末梢静脈を経由して投与できる製剤の浸透圧は900mOsm/kgが限度とされている。現在市販されているPPN製剤の浸透圧は900mOsm/kg以下となっており、血液に対する浸透圧比としても3以下である。浸透圧を下げるためには、脂肪乳剤を併用することが有効である。PHとしては6.7〜6.9の製剤が一般に用いられている。
④ ヘパリン、ステロイド、血管拡張薬の使用
 PPN施行時の静脈炎発生を予防する目的で、少量のヘパリンやステロイドを輸液中に混入させ、ニトログリセリンなどの血管拡張薬含有シールが使用され、良好な成績が得られたという報告もある(参考文献7-1-5)。しかし、PPN製剤は格好の細菌増殖の培地であり、いたずらに長期間、カテーテルを留置して実施すべきではない。CDCガイドライン、厚生労働省発行のガイドラインでは、72〜96時間ごとにカテーテルを入れ換えることが推奨されている。これは、静脈炎が発生する前にカテーテルを入れ換えるという意味である。
⑤ 滴定酸度
 輸液のpHは、水素イオン濃度、すなわち溶液中で解離している酸を示しているだけである。滴定酸度は、溶液をpH7.4に中和するために必要なNaOHの量として表され、解離した酸だけでなく、解離していない酸も含めた総酸性度を示している(OHのmEq数)。同じpHでも、滴定酸度が高いということは、輸液が血液で希釈されてもpHが血液のpHに戻りにくく、より血管障害性が強くなっていることを意味している。PPN製剤では、ブドウ糖とアミノ酸を混合する必要があるため、メイラード反応を抑えるためにpHを低くする必要があり、そのために滴定酸度を高くする必要もあることになるが、静脈炎発生予防の観点からは、滴定酸度の低い製剤を選択すべきである(表2)。
図7

図7●PPN施行時の合併症:末梢静脈炎
静脈に沿った発赤、腫脹(→)を認める。その原因はさまざまであるが、輸液組成としての浸透圧、pH、滴定酸度が重要である。本症例ではビーフリード®が投与されており、4日目に静脈炎のために抜去することとなった。ガイドラインでは72〜96時間でカテーテルを入れ換えることが推奨されている。これは、すなわち、静脈炎が発生する前に入れ換える、という意味であり、本症例では、より早期にカテーテルを入れ換える必要があった。また、この静脈炎発生頻度は個人差が大きいため、きめ細かな観察が必要である。

PPH製剤
pH
滴定酸度
(mEq/l)
浸透圧
(mOsm/kg)
アミカリック®5.0
19.7
802
マックアミン®6.8
7.3
726
プラスアミノ®4.3
22.5
783
アミノフリード®6.6
7.8
862
ツインパル®約6.9
6
約3(浸透圧比)

表2●末梢静脈栄養用輸液剤のpH、滴定酸度、浸透圧

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