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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-2:栄養不良と免疫機能低下[decline of immune functions by malnutrition]

栄養不良と免疫機能低下[decline of immune functions by malnutrition]
 栄養不良,特にタンパク質とエネルギーが充分に摂れていない低栄養(PEM)では,自然免疫および獲得免疫のいずれの機能も低下することが知られている.なかでも細胞性免疫の機能低下は著しく,その要因としてPEMの状態が続くことによって胸腺が萎縮し,末梢血T細胞が減少することがあげられる.とりわけ,Th細胞は著明に減少し,サプレッサーT細胞(Ts細胞)は中等度に減少して,Th/Ts比が有意に低下することが認められる(参考文献4-2-8).また,胸腺のみでなくGALTの萎縮も認められる.GALTの萎縮は腸管粘膜の免疫機能を低下させ,消化管感染の悪化を招く.
 栄養不良では,PEMのようなタンパク質やエネルギーの不足だけでなく,各種ビタミンや微量元素の欠乏も関与している.ビタミンAは生体防御に不可欠な要素であり,特に腸管免疫に重要である.ビタミンAの主要な活性成分であるレチノイン酸は,T細胞に作用してインテグリンα4β7や,ケモカイン受容体CCR9の発現を誘導し(参考文献4-2-9),腸管へのT細胞遊走を促進する.またB細胞に作用してIgA産生形質細胞への分化と腸への遊走を促進する(参考文献4-2-10).
 また亜鉛欠乏では免疫システムの異常をきたし,胸腺の萎縮とそれに伴う細胞性免疫の機能低下を認める.亜鉛欠乏になると,副腎皮質からのグルココルチコイドの分泌が亢進されて血中のグルココルチコイドが増加する.このことが,胸腺の萎縮にかかわっている可能性が示唆されている.また亜鉛は免疫細胞のシグナル伝達で重要な働きを示すことから,抗原刺激に対する反応の低下をきたすとも考えられている(参考文献4-2-11).

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