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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-3:チロシン代謝[tyrosine metabolism]

チロシン代謝[tyrosine metabolism]
 チロシンは,必須アミノ酸であるフェニルアラニンのヒドロキシル化で合成される.この化学反応を進める酵素であるフェニルアラニンヒドロキシラーゼが先天的に欠損している場合,フェニルケトン尿症を発症する.
 チロシンの芳香族がさらにヒドロキシル化されると,l-ドーパが生成する.l-ドーパから神経伝達物質であるカテコールアミン(ドーパミン,ノルアドレナリンアドレナリン)ができる(図5).チロシンからアドレナリンまで代謝できるのは主として副腎髄質の細胞である.脳のある種の細胞では,ノルアドレナリンまでで代謝が終わり,またドーパミンが最終産物となっている脳の特定領域の神経細胞もある.
 一方,チロシンがチロシナーゼにより酸化されると,中間体のl-ドーパが直ちに酸化されてドーパクロムに変わる.ドーパクロムは別の酵素の作用でさらに重合し,メラニンとなる.メラニンは黒褐色色素であり,皮膚や毛髪あるいは虹彩など動物組織に広く分布し,過剰の太陽光を吸収する役割がある.チロシナーゼが先天的に欠損している疾患が白皮症(アルビノ)である.
 一方,甲状腺ではチロシンから甲状腺ホルモンが合成される.甲状腺で合成されるのは主にヨウ素が4つ結合したチロキシン(T4)である.全身に分布するトリヨードサイロニン(T3)の大部分は,T4が肝臓や腎臓などの甲状腺以外の組織で脱ヨード化して生じたものである.甲状腺ホルモンとしての作用は,T4よりもT3の方が10倍高いといわれている.
図5

図5●チロシン代謝

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