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    第11章高齢者の栄養管理

    11-1:サルコペニアとフレイル[sarcopenia and frailty]

    サルコペニアとフレイル[sarcopenia and frailty]
     サルコペニアとは,加齢による骨格筋量の低下をいい,副次的に筋力や有酸素運動能力の低下がみられる.筋肉量の低下を必須項目とし,筋力または身体能力の低下のいずれかが当てはまればサルコペニアと診断される.一方,フレイルとは,日本語で「虚弱」と訳され,単に筋肉の量や機能が低下するだけではなく,認知機能の低下やうつなどをもたらす精神的なフレイルや,引きこもりや他人とのコミュニケーションが減少する社会的なフレイルも含まれる.つまり,サルコペニアがすべての年齢層における筋肉量の減少を主症状とする疾病であるのに対して,フレイルは筋肉に限定されない加齢に伴う全身の機能低下状態,いわば症候群である.そして,両者に共通しているのは,エネルギーとタンパク質が不足した低栄養である(参考文献11-1-1).したがって,サルコペニアとフレイルの対策に共通しているのは低栄養の予防・治療であり,栄養状態の改善が重要になる.特に介護予防においては,低栄養になると疲労感の増大や活力の低下,筋力低下による歩行速度の低下,活動量の低下が起こり,介護リスクが増大することから,フレイル対策の必要性が叫ばれるようになった.
    表2●フレイルの区分別の自己喪失,要介護,死亡の7年間の発生率

    (参考文献11-1-2より引用)

     東京都健康長寿医療センターの北村らは(参考文献11-1-2),高齢者健診を受診した65歳以上の対象者に対してフレイル区分別の自己喪失,要介護,死亡の発生率をアウトカムとして観察している(表2).その結果,フレイルの程度が進んだ群ほど,アウトカムの発生率はいずれも高値を示し,7年間の自己喪失発症率は,男性ではフレイルなし群に比し,プレフレイル群で約2倍,フレイル群で約5倍,女性でもプレフレイル群で約2.5倍,フレイル群で約6.5倍を示した.アウトカムの年齢調整ハザード比では,前期高齢者の方が後期高齢者に比して高く,いずれも3~4倍の高いリスク比を示し,フレイルは高齢期でも早期に発見して取り組む方が効果的であることを明らかにした.ヨーロッパの報告では(参考文献11-1-3),1970年代から2007年までの北欧男性を対象に長期間のBMIの変化とフレイルの発症を4群に分けて検討した観察研究において,正常域無変化群,一貫した過体重群,体重増加群には関係はみられなかったが,体重減少群のみに有意にフレイルの発症が増大していた.
     慢性疾患患者の高齢化は,栄養の領域に新たな問題点を提起している.高齢糖尿病患者ではサルコペニア,認知機能低下,ADL低下,転倒,骨折などの老年症候群やフレイルが非糖尿病患者に比べて起こりやすく,なかでもフレイルが合併すると介護度が増すと同時に死亡率も高くなることがわかってきた(参考文献11-1-4).加えて,HbA1cが8.0%以上になると糖尿病の各種合併症が起こりやすくなるが,一方で7.0%未満になると骨折,転倒が多く,フレイルにもなりやすくなるという報告がされている(図1).そのため各国で高齢糖尿病患者のHbA1cの目標値を一般の糖尿病患者より高めに設定することが検討されている.慢性疾患患者が長期に食事制限を実施することにより栄養状態が低下し,フレイルの誘因になることがわかってきたため,疾病治療と機能維持の両面を満足させる栄養管理が必要になる.
    図1●HbA1c値とフレイルのハザード比

    図1●HbA1c値とフレイルのハザード比
    Adult Changes in Thought studyの高齢住民1,848名(糖尿病患者200名)の4~8年の追跡調査.
    Friedらのフレイル:体重減少,疲労感,活動性低下,筋力低下,歩行速度低下
    *:ハザード比:年齢,認知機能,性,BMI,教育歴,人種,脳卒中,冠動脈疾患,心不全,COPD,CES-D,健康感を調整
    (文献11-1-4をもとに作成)

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