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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-1: ERAS・ESSENSE・ファストトラック[ERAS/ESSENSE/Fast Track Surgery]

■ERAS・ESSENSE・ファストトラック[ERAS/ESSENSE/Fast Track Surgery]<
 術後の合併症を防ぎ早期回復を促進するために,さまざまな工夫が実践されてきた.近年,それらの工夫の数々をまとめてとり入れ,バンドルとして運用する患者管理法が推奨されるようになっている.欧州臨床代謝栄養学会が推奨する管理法はERAS(Enhanced Recovery After Surgery)と命名され,同様の管理法を米国ではファストトラックとよんでいる.
 わが国でも,日本外科代謝栄養学会がESsential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfactionの略称をESSENSEと名付け,早期回復を目的としたプロジェクトを立ち上げている.その基本理念は,生体侵襲反応の軽減,身体活動性の早期自立,栄養摂取の早期自立,周術期不安軽減と回復意欲の励起である.
 ERASの栄養に関する項目としては,周術期の経口摂取(絶食期間をできるだけ短くする),術後の腸管運動刺激,悪心・嘔吐の予防,術中に大量のナトリウム・水分を負荷しないことによる腸管浮腫の予防,術前夜・当日朝の炭水化物液の経口摂取がある(図1).
図1
図1●ERASプロトコールの項目
栄養に関連する項目を赤字で示した.
(文献10-1-5をもとに作成)

腸管を使用した栄養管理を行うことで前述のように感染防御能改善・早期回復を図り,術前炭水化物液経口摂取で患者の口喝・不安感を軽減するとともに,糖代謝の改善・筋萎縮の予防が期待されている.臨床効果としては,合併症発生率や再入院率を上げることなく,早期の回復・退院が可能となることが多くの研究で報告されている.

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