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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-6:鉄(Fe)[iron]

鉄(Fe)[iron]
 血清鉄基準値:男性44~192μg/dL,
        女性29~164μg/dL
 体内に分布する鉄(Fe)は3~5 gであり,その役割は,細胞呼吸に関連することや結合組織合成,ホルモン合成,抗酸化活性など多岐にわたり,60~70%がヘモグロビンと結合して赤血球内に,20~30%はフェリチン,ヘモジデリン,ミオグロビン,ヘム酵素,非ヘム酵素,トランスフェリンとして肝臓,脾臓,筋肉,骨髄,血液に分布している.これらの鉄は効率よく保存され,腸細胞の脱落,少量の出血,胃と外皮の脱落によって約1 mg/日が基本的損失として糞便,尿,毛髪,爪から排泄される.また,女性では月経がある場合,その鉄損失として10~17歳で0.46 mg/日,18歳以上で0.55 mg/日が加わる.
 食品から摂取された鉄は十二指腸および空腸の上部で第一鉄(Fe2+)の形で吸収されるが,これは全身の鉄要求性に応じた反応によって調節され,鉄欠乏状態では吸収率が上昇し,鉄過剰状態では吸収率が低下する.また,食事中のヘム鉄,非ヘム鉄の構成比,鉄の吸収促進や阻害因子となる食品の摂取状況によって異なってくる.通常状態では,日本人では個人間変動を含めて15%とされている.吸収されたFe2+は,血清セルロプラスミンの作用でFe3+へと酸化された後,アポトランスフェリンへわたされ,トランスフェリンとなり,赤芽細胞,その他の組織へ運ばれる.
 赤血球の寿命は,約120日であり,1日当たり約1011個の老化赤血球が処理され,ヘモグロビンも分解されるが,遊離した鉄はフェリチンに結合して貯蔵される.
 鉄の代表的な欠乏症としては,血清鉄,フェリチン値が低下する鉄欠乏性貧血があげられるが,血清鉄は低下するが,血清フェリチン値は低下しない慢性疾患貧血(ACD)も存在する.鉄過剰としてあげられるのは遺伝性へモクロマトーシスである.また,難治性貧血疾患で長期間,赤血球輸血が実施された場合にもみられる.

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