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キーワードでわかる臨床栄養

第12章在宅栄養管理

12-3:摂食嚥下支援と食支援

摂食嚥下支援と食支援(参考文献12-3-4)
 摂食嚥下支援が含まれる食支援(食支援⊃摂食嚥下支援)における栄養管理とリハビリテーションの関係を図1に示した.
 人は老化とともに徐々に摂食嚥下機能が低下していく(これを図1の左から右としている).老化以外にも神経難病,脳血管障害,認知症などの疾病により,機能低下が加速することもあるが,それ以上に禁食(経口摂取の禁止)が何よりも悪化の要因となる.
図1●栄養管理とリハビリテーション

図1●栄養管理とリハビリテーション

 食支援のなかに栄養管理があり,栄養管理のなかに栄養療法(在宅経腸栄養・在宅静脈栄養含む)・栄養治療がある.栄養管理に関連することを上段に,リハビリテーションに関連することを下段とした.摂食嚥下障害の外科的治療のタイミングについては最下段に示した.
 また,AHNで栄養管理している患者の栄養補給の減量はAHNをしない患者とくらべてもう少し早い段階から行うことが必要となる(個人差はあるが余命3~6カ月ごろ).これは胃瘻にかかわらず過剰なAHNを行うことで,浮腫や消化器症状(悪心・嘔吐・下痢),唾液分泌の増加による食後の喘鳴が出現することがあるためで,これを見逃して強制栄養を続けることは,患者を苦しめることになる.このようなサインがみられた際には,注入量を調整し徐々に減量していくことが望ましい.
 余命1カ月と判断できれば,必要最小限度の水分・ビタミン・ミネラルを補充する.胃瘻は,神経難病,心不全の患者では薬剤投与ルートとしても利用できることは強みである.末期がんの患者にとって胃瘻はドレナージとしても利用でき,嚥下機能に問題がない患者なら,口からアイスやアルコールを摂取することができる.
 対象の患者(生活者・利用者)が,図1のどこに該当するのか,それは不可逆的なものか,人生の最終段階なのか,現時点で何を目標としているのか,そして,どのような思いでいるのかを,患者にかかわる多職種で共有し,各々ができるキュアとケアを提供することが重要である.
 在宅療養には5つの支援(医療支援,介護支援,生活の支援,生きがいの支援,心の支援)があるが,食支援には,食材選択,調理方法,五感での楽しみなどの意味合いも含んでいるため,5つの支援すべてに精通することが求められる.
 キュアよりもケアを重視する在宅療養では,患者(生活者・利用者)の望む目標をサポートするためのAHNを提供することが重要である.栄養(食)は人間にとって命の源であり,患者が「生きていること(命)」だけではなく,「生きていくこと(生活)」のためにQOLを高める支援として,AHNを含めた栄養管理を行うことは必ずしも非難されることではない.適切な栄養管理を行うことは,患者一人ひとりが人生の最終段階においても平安な生活を過ごしていけることにつながる.

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