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第9章静脈栄養法

9-2:PICC[peripherally inserted central catheter]

PICC[peripherally inserted central catheter]
 末梢挿入式中心静脈カテーテルで,単に「PICC」とよばれる.かつては肘の静脈を穿刺して(図6)腋窩静脈,鎖骨下静脈を経由して上大静脈(図7)に先端を位置させる方法(肘PICC法)が実施されていたが,現在は上腕PICC法が実施されている.挿入時に気胸や血胸などの重篤な合併症が起こらないことが最大の利点である.患者の恐怖心が軽減されることも大きな利点である.肘PICC法では,肘を曲げることにより滴下状態が変動する,静脈炎の発生頻度が高いという問題があったが,上腕PICC法ではこの問題は解決できる.エコーガイド下に実施するため,動脈穿刺などの合併症も発生しない.挿入時の安全性がきわめて高い,非常に有用な中心静脈カテーテル挿入法である.
図6

図6●肘から挿入する中心静脈カテーテル:PICC
肘正中皮静脈を穿刺して上大静脈までカテーテルを挿入する.穿刺時の合併症がほとんどないという利点があり,リスクマネジメントの観点からは,きわめて有用なカテーテルである.しかし,肘を曲げることにより滴下が不安定になるという欠点がある.静脈炎の発生頻度も高くなるため,現在は上腕PICCが推奨されている.

図7

図7●PICCのX線写真
左尺側皮静脈から挿入され,腋窩静脈,鎖骨下静脈,無名静脈を経由して上大静脈に先端が位置している.カテーテルは4 Frと細いが,放射線不透過ラインが入っているので走行の確認は容易である.腕から挿入するので,内頸静脈への誤挿入の可能性もあるが,腕を外転する,穿刺側へ顔を向ける,などの工夫をすれば,誤挿入の率を低くすることができる.

 エコーガイド下上腕PICC法(図8)は,2006年から本邦で実施されているが,現在,急速に普及してきている.特に,診療看護師や特定研修を終えた看護師が挿入するようになり,さまざまな領域で実施されるようになっている.当初は先端にバルブ機構がついているカテーテル(Groshongカテーテル:図9)だけであったが,ポリウレタン製カテーテル,ダブル・トリプルルーメンカテーテルも販売されている.血管穿刺用超音波診断装置も多種類の機種が販売されている.2019年には,ケーブルのないポケットタイプのエコーも発売された(図10).モニター画面と穿刺部位をほぼ同一視野でみることができるという利点がある(図11).
図8

図8●上腕PICC
エコーガイド下に,上腕で尺側皮静脈を穿刺し,上大静脈までカテーテルが挿入されている.肘の屈曲による滴下不良という問題も解決される.もちろん,挿入時に重篤な合併症は起こらない.現在,急速に普及してきている.

図9●Groshongタイプカテーテル

図9●Groshongタイプカテーテル
左尺側皮静脈カテーテルの先端は盲端となっているが,先端近くの壁にスリットが入っている.この構造のため,上大静脈の圧の範囲内では血液がカテーテル内に逆流しない.したがってヘパリンロックは不要である.また,輸液を投与する場合は陽圧がかかるためスリットが外側へ開き,血液を吸引する場合には陰圧のためにスリットが内側へ開く.

図10

図10●ケーブルのないポケットタイプの血管穿刺用ポータブルエコー

図11●ケーブルのないポケットエコー

図11●ケーブルのないポケットエコー
穿刺部とモニター画面を同一視野でみることができる.

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