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第6章経腸栄養法

6-2:早期経腸栄養法

 大きな侵襲を受けた生体は、代謝が亢進し、除脂肪体重が減少する。早期経腸栄養法はこの除脂肪体重の喪失をできるだけ最小限にとどめ、侵襲後の代謝亢進を防止する目的で施行する。また、侵襲時には消化管粘膜上皮の萎縮を来し、消化管の機能が障害されるが、この消化管粘膜上皮の形態を正常に保ち、消化管の全体的な機能を保つことにより、全身の免疫能および生体防御機能を維持することも目的となる。
■2 早期経腸栄養法の定義とその適応
 受傷(手術)後または入院後24〜48時間以内に開始される。脳血管障害、多発外傷、熱傷、急性重症膵炎あるいは腹部の大手術後などに適応される。
■3 侵襲下、手術後の消化管機能
 多発外傷や熱傷などの大きな侵襲下では胃の運動は一時的に障害され、膵炎では胃周囲への炎症の波及により胃の機能は障害される。しかし、小腸の運動は保たれていて、幽門後(空腸上部)に栄養を投与することは可能である。また、腹部術後、消化管の運動は一時的に低下するが、消化管の筋電気活性の回復時間を検討すると、小腸は術後4〜8時間で最も早く回復し、胃は24時間、大腸は最も遅く3〜5日で回復することがわかっている(参考文献6-2-1)。
 現在でも術後聴診器で腸管の蠕動音を聞いたり、排ガスを確認して消化管内への栄養を開始しているが、蠕動音の聴取が必ずしも小腸機能の回復を意味しない。近年の麻酔技術の進歩により、術後も引き続き持続硬膜外麻酔による疼痛管理を行うことで、消化管の蠕動もより早期に回復する。
■4 投与方法
 循環動態が安定している場合には、空腸上部に栄養チューブの先端を留置して、経腸栄養専用ポンプを用いて持続的にゆっくり投与する。初回は20〜30mL/時のスピードで開始して12〜24時間ごとに投与スピードを上げていく(表Ⅰ)。多くは腹部手術に併用し作成された空腸瘻を用いて投与するが、開腹手術を必要としない多発外傷、熱傷および急性膵炎などの際には経鼻・栄養チューブの先端を空腸上部に留置して投与する。栄養剤は侵襲下の特殊処方製剤または一般処方のLRDも適応とされる。重症膵炎や膵頭十二指腸切除術後は膵液の分泌を避けるため成分栄養剤を選択する(参考文献6-2-2)。しかし、重症膵炎でも空腸上部に栄養剤を投与すればLRDでも膵液の分泌を亢進しない(参考文献6-2-3)。

初日20mL/時
第2日目30mL/時
第3日目40mL/時
第4日目60mL/時
第5日目80mL/時

表Ⅰ●早期経腸栄養投与スケジュール
注:スピードを上げて下痢、腹部膨満感、腹痛などの消化器合併症が発現したら前日のスピードに戻す。

■5 利点と欠点
 望月らの動物実験によると熱傷後早期(2時間後)から経腸栄養を開始すると、熱傷後の安静時代謝消費量の亢進が抑制された。これは経腸栄養を早期に開始することによって、ストレスホルモンの分泌亢進が抑制されるためであり、また、熱傷後の空腸粘膜重量や粘膜の厚さとストレスホルモンの分泌量との間に逆相関がみられることが示された(参考文献6-2-4)。Moore、Kudskらは回復術後および腹部外傷例について受傷後24時間以内にTPNあるいは経腸栄養法を開始する2群に分けて検討した結果、肺炎や腹部膿瘍などの敗血症性合併症発生率が経腸栄養群に優位に低かったことを報告した(参考文献6-2-5,6-2-6)早期栄養療法の利点は表Ⅱにまとめた。
 欠点をしいてあげれば経腸栄養専用ポンプが必要であることである。また、血行動態が安定していない時期(例えばショックなど)に投与を開始すると腸管の血流障害のために機能も障害されていて、腸管の壊死など思わぬ合併症を発生する場合があるので十分注意する。

● 消化管粘膜重量の維持
● 粘膜免疫能の維持
● 腸管の防御機能の維持
● 過剰な代謝反応の抑制
● 感染性合併症発生率の減少

表Ⅱ●早期経腸栄養の利点

■6 早期栄養療法の施行例
【症例1】67歳 男性、急性重症膵炎(図Ⅰ)
 来院時激しい腹痛があり、血清アミラーゼ:2,003 IU、血糖値:258mg/dL、BE:〜4.1、CT:グレードⅣ。入院日(第1病日)は末梢輸液を投与して、胃管を留置し胃液貯留量をモニターした。第2病日には胃液の排出も少なくなったので、胃管を抜去して8Frの経鼻栄養チューブを胃内に留置し成分栄養剤(1kcal/mL)の注入を20mL/時で開始した。それと同時にGFOの投与を併用した。第7病日には成分栄養剤1,800kcal/日の維持量に上げて第11病日には流動食を開始した。血糖値をレギュラーインスリンを使って150mg/dL以下にコントロールした。

【症例2】70歳 男性、食道がん(図Ⅱ)
 病変部の狭窄が強く、術前から経口的に栄養剤1,800kcal/日を服用し、右開胸開腹による根治術を行った。手術時に造設した空腸瘻より術後第1日目から栄養剤の注入を開始して、第7日目には1,800kcal/日の維持量とし、第9日目には経口摂取を開始した。体重も術後10日目で術前とほとんど変化なかった。

このようにほとんどの腹部大手術後はTPNを必要としない。
図Ⅰ

図Ⅰ●症例1:67歳 男性、急性重症膵炎(クリックで拡大します)
急性重症膵炎にも早期経腸栄養法は適応であり、感染症などの合併症の発生率を減少させる。膵炎においても空腸上部にカテーテルを留置すればLRDでも膵液分泌を刺激しないとされている。本症例の場合は経鼻・胃投与のために成分栄養剤を使用し、同時にGFOを併用した。また、血糖値を厳重に管理することが重要であり、本症例の場合150mg/dL以下を目標として管理した。
GFO:glutamine, fiber, oligosaccharide, BG:blood glucose, s-Amylase: serum amylase, CRP:C reactive protein, s-Alb: serum albumin

図Ⅱ

図Ⅱ●症例2:70歳 男性、食道がん(クリックで拡大します)
狭窄が強く食餌摂取が不十分な場合には、術前より細径の経鼻・胃栄養チューブを留置して、あるいは本症例のごとく経口的にLRDを投与し、栄養状態を保ちながら術前検査や制がん化学・放射線療法を行う。術後は第1日目に手術時に作成した空腸瘻からLRDを20mL/時で投与を開始し、徐々に投与量を上げていく。術後も体重減少がほとんどみられない。
POD:post operative day(術後日数)、BW:body weight, s-Alb:serum albumin



【執筆】大熊利忠氏
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