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第8章各疾患の栄養管理

8-1:周術期の栄養管周術期の栄養管理①─高度侵襲手術に対する栄養管理

 栄養不良があると外科手術後の合併症の発生率や死亡率が高くなることが知られている。特に消化器外科手術患者は、食欲不振や通過障害などが存在し、術前から栄養障害に陥っている患者が少なくない。術後も絶食を余儀なくされることが多い。食道がん切除や膵頭十二指腸切除は、消化器外科手術の中でも侵襲が大きく、術後経口摂取不十分な期間が長い。また術前から栄養不良に陥っている患者が多く周術期の栄養管理の重要性が高い。
■1 術前栄養管理の意義と適応
 栄養管理の目的は、合併症発生率や死亡率を減少させることにある。まず栄養評価を行い(1-6:栄養アセスメント参照)栄養管理が必要か否かを判断する。通常、健康時体重の10%以上の体重減少があれば中等度以上の栄養障害ありと判断し、栄養管理の適応と考えてよい。このような患者では潜在的に微量元素やビタミンも不足していることが多いので十分に注意する。
 術前栄養管理は術後に比べて軽視されがちであるが、術後合併症予防の観点などからは、むしろ術後より重要と考えられる。しかし悪性疾患をはじめとして栄養管理のためだけに、いたずらに時間を費やすわけにはいかない。術前化学療法などを行わない場合、通常は2週間程度の期間で行うことが推奨されている。最近は術前入院期間が短くなる傾向にあるため、外来における栄養管理の重要性が増している。
 アルギニン、n-3系不飽和脂肪酸、核酸を強化した免疫増強(調整)経腸栄養剤(IED)を周術期に投与すると、術後の感染性合併症発生率が約半分に減少するという、多くの臨床データが報告されている。このような栄養管理はImmunonutritionと呼ばれ、特に待機手術患者の術前投与で効果が高いとされているので、是非念頭に置きたい(参考文献8-1-1)(6-3:Immunonutrition参照)。
図Ⅰ

図Ⅰ●術前栄養管理(クリックで拡大します)
PPN:末梢静脈栄養、TPN:中心静脈栄養、SGA: subjective global assessment(包括的主観的評価)
IED: immune-enhancing enteral diet(免疫増強経腸栄養剤)。最近は広い意味でimmune-modulating enteral diet(免疫調整経腸栄養剤)とよばれることも多い。

■2 術前栄養法
 栄養法は経口摂取が基本であるが、食道がんなどでは通過障害のために十分な経口摂取ができない場合が多い。基本的に通過障害の程度によって経口栄養、経腸栄養、経静脈栄養の順に選択し、それぞれの併用も適宜考慮する。可能な限り腸管を用いた栄養法を行うことが栄養学的にも、生体防御維持の面からも、また合併症減少のうえからも望ましい(When gut works, use it)。食道がん患者で術前化学放射線療法を併用する場合など、比較的長期間の術前栄養管理が必要と考えられる場合で、かつ通過障害が高度な場合などでは、積極的に(内視鏡的)胃瘻を造設して栄養管理を行うことも視野に入れる。一般に胃瘻造設が根治手術時に障害となることはないとされている。なお、栄養障害が高度な場合はrefeeding症候群に注意し、少量からゆっくりと増量することが重要である。
■3 術後栄養法
 術後速やかに経口摂取が再開できる体表の手術(乳がんなど)や、消化器外科手術でもERASプロトコル(2章:侵襲に対する生体反応参照)等によって2〜3日以内に十分な経口摂取が可能となることが予測される場合、術後の人工栄養管理(artificial nutrition)は通常不要である。絶食期間が1週間以内でかつ術前からの栄養不良がない場合も、末梢静脈から水分・電解質を補給し、状況により末梢静脈栄養法を付加する程度でよい。
 しかしながら、術後経口摂取が不十分となる期間が長くなることが予測される場合、また術前から栄養不良を有する患者では、術後早期からの積極的な栄養管理が望まれる。このような患者では術中に栄養投与目的の腸瘻チューブを留置し術後は早期経腸栄養を行うことが勧められる。高齢者などでは、術式によって術後長期間にわたり経口摂取が不十分となることも多く、その場合は在宅にて経管栄養を継続するとよい。中心静脈栄養(TPN)(7章:経静脈栄養法参照)は経腸栄養が何らかの理由で不能な場合に行う。
図Ⅱ

図Ⅱ●術後栄養管理(クリックで拡大します)

■4 栄養投与量
 食道切除術や膵頭十二指腸切除術など、侵襲が大きい手術の術後は、エネルギー投与量がこれまで高く設定されがちであった。しかし最近では、術後のエネルギー消費量が思いのほか高くないこと、overfeedingの弊害が予想以上に大きいことが明らかになるにつれ、目標投与カロリーは低く設定されることが多くなってきている(参考文献8-1-2)。実際には25kcal/kg/日(30kcal/kg/日以内)が現実的であり最近のガイドラインでも推奨されている(参考文献8-1-3)。肥満やるい痩が高度な場合は理想体重を参考にする。タンパクは1.2〜1.5g/日程度投与する。脂肪の投与量は総エネルギーの20〜30%以内が安全とされる。
■5 術後血糖管理
 糖尿病がなくとも術後は耐糖能が低下する(surgical diabetesといわれる)。また膵切除する場合は、インスリン産生細胞が減少するので耐糖能の低下は助長される。200 mg/dLを越える程度の高血糖でも、心臓外科手術患者の感染性合併症発生率が増加することや、敗血症患者の生存率が低下することが報告されている。したがって、できれば持続インスリン投与を行って低血糖を起こさない150〜180mg/dL以下に血糖値を厳密に管理するのが望ましい(参考文献8-1-4)。TPNで多量のグルコースを投与すると容易に高血糖となるので注意が必要である。この点からも経腸栄養が勧められる。
■6 周術期TPNの功罪
 現在では器具や投与輸液製剤などの進歩によって、きわめて容易に経静脈栄養、中心静脈栄養(TPN)が実施できる。反面、多くの患者に対する半ばルーチン化したTPNの適応、濫用が問題視されている。
 TPNの効果としては、高度な栄養障害患者に7日以上にわたり十分量が投与された場合、術後合併症の有意な減少がみられる。10%以上の体重減少がある胃および大腸がん患者90症例を対象とした報告では、術前10日間および術後9日間のTPNを行う群と、術前にTPNを行わず、術後は低カロリーの輸液を行うコントロール群とを比較検討した結果、全術後合併症発生率は、37% vs 57%とTPN群で有意に低かった(参考文献8-1-5)。
 一方、栄養状態が良好もしくは軽度の栄養障害しかない場合、あるいは短期間投与(2〜3日)では、かえって合併症が増加することが指摘されている(参考文献8-1-6)。また1997年メタアナリシスでは、術前TPNの有効性が示される反面、手術直後からルーチンに行われたTPNは、むしろ術後合併症を増加させるという結果であった(参考文献8-1-7)。このようなことから、米国ASPENの2002年のガイドラインでは、“手術直後からルーチンのTPNは行うべきでない”とlevelAで推奨されている(参考文献8-1-8)。しかしこれは、従来のTPNでは過剰に栄養が投与されていたり、またそれに伴う高血糖が一因となっている可能性も指摘されている。最近の欧州ESPENのガイドラインでは経腸栄養で十分量が投与できない場合、早期から経腸栄養と静脈栄養を併用することが勧められている(参考文献8-1-3)。

【執筆】福島亮治氏
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