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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-7:糖尿病

■糖尿病の分類

 糖尿病は,インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝性疾患であり,糖,脂質,タンパク質を含むほとんどすべての代謝系に異常をきたす(参考文献10-7-1).糖尿病は①1型糖尿病,②2型糖尿病,③その他の特定の機序・疾患によるもの,④妊娠糖尿病の4つに分類される(表Ⅰ).1型糖尿病は,自己免疫機能の異常などにより膵臓ランゲルハンス島β細胞が破壊され,高度のインスリン分泌不全を呈する.2型糖尿病は,インスリン分泌不全にかかわる遺伝的な素因に,インスリン抵抗性に影響するエネルギー過剰摂取,運動不足,肥満,ストレス,加齢などが加わり発症する.

表Ⅰ

(文献10-7-1より引用)


その他の特定の機序・疾患によるものは,遺伝子異常や他の疾患により引き起こされる糖尿病を指す.
妊娠糖尿病は妊娠中に発症あるいは診断される耐糖能異常である.

図Ⅰ

図Ⅰ●糖尿病の臨床診断フローチャート
(文献10-7-1より引用)

■治療方針

 糖尿病は,慢性の高血糖状態を確認し,症状・徴候などの臨床所見を考慮して診断する.糖尿病の臨床診断フローチャート(参考文献10-7-1)を図Ⅰに示す.1型糖尿病ではインスリン治療が必須となるが,2型糖尿病では食事療法,運動療法が治療の根幹であり,必要に応じて薬物療法を行う.
合併症の進展抑制には血糖値や血圧などの管理が重要であり,糖尿病の成因,病態,合併症病期を考慮して食事・生活習慣などの適正化を促す必要がある.

A. 食事療法
 2型糖尿病の食事療法の目的は,代謝状態を正常に近づけてインスリン分泌不全やインスリン抵抗性を改善し,合併症の発症・進展を抑制することにある.適切な食事療法は,食後血糖値を抑制して薬効を高め,インスリン抵抗性を改善する.摂取エネルギー量は,標準体重に身体活動量を乗じて求める.ただし,最も死亡率の少ないBMIは23~27とする報告もあり,高齢者糖尿病においてはフレイル・サルコペニア予防の観点からの摂取エネルギー量に関するエビデンスの集積が待たれる.
 栄養素のバランスは炭水化物50~60%,タンパク質20%,食物繊維20g/日以上を目安に,適量を規則的に食べることが基本である.また,食物繊維を多く含む野菜を先に食べるなど,食べる順番を工夫することもある.1,200 kcal以下の食事では,鉄,クロム,ビタミンなどの微量栄養素不足,それに伴うインスリン感受性低下や過酸化脂質濃度上昇(参考文献10-7-2),(参考文献10-7-3)なども知られており,欠乏症にも注意が必要である.適切な食事療法の実践には,食環境や経済力なども考慮し,調達から食べ方に至る具体的な指導を継続的に行う必要がある.

表Ⅱ



B. 運動療法
 運動療法の目的は,食後高血糖の抑制およびインスリン感受性の改善,骨格筋の維持であり,有酸素運動およびレジスタンストレーニングに加え,バランスや柔軟性を高める運動も組み合わせて行う.導入前に,運動療法が禁忌となるコントロール不良の高血糖や尿ケトン体陽性,および進行した網膜症・腎症の有無,併存疾患,身体機能,栄養状態などを評価し,安全な管理のもとで行う.

C. 薬物療法
 薬物療法を行う際,低血糖の回避に注意を要する.特に高齢者や複数の疾患が重複する場合は,ポリファーマシーによる有害事象のリスク,服薬過誤,服薬アドヒアランス低下などに留意する(参考文献10-7-4).経口血糖降下薬の分類を表Ⅱに示す.

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