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第6章経腸栄養法

6-1:経腸栄養法の適応と投与方法

■1 消化管は最大の免疫臓器である
A. 生命維持に最も重要な臓器:消化管
 この地球上に消化管を持たない動物はいない。腔腸動物は脳やそのほかの器官ははっきりしないのに消化管は存在する。すなわち動物の生命を維持するには何よりも重要な臓器は消化管である。さらに、消化管は身体内で最も大きな免疫臓器であり、消化と吸収という機能が正常に働いている限り、正常な免疫機能を果たし、生体防御機能を司っている(図Ⅰ)(参考文献6-1-1)。しかし、その消化・吸収機能が中断されるといろいろと生体にとって不都合なことが起きる。これらのことについては5-2:消化管と免疫で詳述される。

B. 消化管の栄養基質について
 消化管粘膜上皮は腸管内および血中の両者から代謝基質を摂取する。小腸は主としてグルタミンを呼吸エネルギーとして利用する。経口摂取または経腸栄養が施行されている際にはそれらに含まれるタンパク質から腸管粘膜上皮細胞はグルタミンを摂取し、呼吸エネルギーとして利用しているが、飢餓時には筋タンパクが崩壊して個々のアミノ酸として血中に出てきたグルタミンを利用しなくてはならない。グルタミンは非必須アミノ酸であり、体内で合成されるが、侵襲期には腸管の代謝は著明に亢進し、安静時よりもさらにグルタミンの需要は高まり、条件付き必須アミノ酸といわれるゆえんである。グルタミンは溶解度(20℃水に対し、3.73%)が低く、変性しやすいために静脈栄養用の総合アミノ酸溶液には含まれていない。したがって静脈栄養下では、グルタミンを投与することは本邦では不可能であり、飢餓時ではグルタミンの供給は筋肉の崩壊に頼らざるを得ない(図Ⅰ)(参考文献6-1-2)。
 一方、大腸も経消化管栄養がなくなると粘膜は著しく萎縮する。大腸の栄養基質は短鎖脂肪酸に依存している(図Ⅰ)。短鎖脂肪酸はデンプンやオリゴ糖などの糖質を基質として大腸内で細菌の分解作用により産生される物質であり、静脈栄養では供給できない。
図Ⅰ

図Ⅰ●生体防御機能を司っている腹部臓器と消化管の栄養基質(クリックで拡大します)
胃液にはpH1〜2という強酸の塩酸があり、その作用により、外部からの病原性細菌はほとんど死滅する。肝臓にはクッパー星細胞があり、腸管から吸収される有害物質を解毒し、消化管には粘液、分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)やGALTなどがあり、生体内で最大の免疫臓器とされている。この消化管の栄養基質には小腸はグルタミンが、結腸は短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)が使われている。

■2 経腸栄養法と経静脈栄養法との比較
A. 臨床的検討
 食道がん術後の栄養管理に早期経腸栄養法と完全静脈栄養法(total parenteral nutrition:TPN)を行い比較検討した。コントロールド・スタディではないが、術後2週間までの窒素バランスは、経腸栄養法(enteral nutrition:EN)において術後8日目から正に転じたが、TPNでは遅れて術後14日目にやっと正になった(図Ⅱ)。また、食道がん術前後の血中DAO活性をみるとTPN群では有意にDAO活性は低下したが、EN群では有意の低下はみられなかった(図Ⅲ)(参考文献6-1-3)。
図Ⅱ

図Ⅱ●食道癌術後窒素バランス(TPN vs EN)(クリックで拡大します)
食道癌根治術後栄養管理において、TPN(完全静脈栄養)群とEN(経腸栄養+末梢輸液)群の窒素バランスを比較するとEN群では8日目で正に転じるもTPN群では14日目にやっと正に転じた。
TPN:total parenteral nutrition, EN:enteral nutrition、POD:術後日数
参考文献6-1-4より引用)

図Ⅲ

図Ⅲ●食道癌術前後の血中 DAO活性の推移
TPN群のDAO活性は術前に比して術後は有意に低下したが、EN群では術前後で有意差はみられなかった。
DAO:diamine oxidase
参考文献6-1-3より引用)

B. 実験的検討
 これらの臨床的事実をラットを用いて実験的に検討した。実験期間は6日間で、経静脈栄養群(TPN群)と経腸栄養群(EN群)の2群に分けてTPN用の栄養剤を、カロリー・窒素量を同一にしてそれぞれ中心静脈及び胃瘻から投与した。実験4、5、6日目の窒素バランスおよび6日間の累積窒素バランスは有意にEN群が良好であった(図Ⅳ)(参考文献6-1-4)。また、尿中のVMA(vanillylmandelic acid、カテコールアミンの最終代謝産物)排出量は実験5、6日目において有意にEN群で少なかった(参考文献6-1-4)。これらのことから、TPNは生体にストレスがかかり、カテコールアミンの分泌を促進し、窒素排出量が多いのではないかと結論した。
 中心静脈栄養法は1968年Dudrick, S. J. (参考文献6-1-5)らによって開発されたが、’74年Levine, G. M. らはラットの7日間の実験において、腸管重量、粘膜重量、粘膜絨毛高が低下し、腸管上皮のDNA含有量や二糖類分解酵素活性が低下していることを発表した(参考文献6-1-6)。図Ⅴはわれわれのラットを用いた実験であるが、2週間のTPNラットと固形飼料によるラットの空腸の組織像である。TPNラットでは著しく腸管は萎縮し、粘膜絨毛高が低く、上皮の剥離が著明であることが一目で理解できる。Li, J.らの動物実験によるとTPNにおいては腸管および気道系のs-IgA値がTPN開始後2日目において、すでに50%まで低下することが示された(参考文献6-1-7)。これらのことより経腸栄養法の利点は次のようなことがいえる。

 ① 腸粘膜上皮の形態と機能を維持する
 ② 生体防御機能を維持する
 ③ 侵襲後のストレスホルモンの分泌亢進を抑制する
 ④ 侵襲後の代謝亢進を抑制する
 ⑤ 侵襲後の筋タンパクの崩壊を抑制する
図Ⅳ

図Ⅳ●TPN群とEN群における窒素バランスの比較(ラット)(クリックで拡大します)
ラットを用いた実験において、投与カロリーと窒素を両群で同一としたTPN溶液を6日間投与した。実験4、5、6日目および実験期間中の累積窒素バランスは有意にEN群で高値を示した。*: p<0.05, §: p<0.01
参考文献6-1-4より引用)

図Ⅴ

図Ⅴ●固形飼料とTPN管理ラットの小腸組織像の比較(クリックで拡大します)
固形飼料ラットでは小腸絨毛の丈が高く、密生し、筋層も厚い。TPNラットでは絨毛は丈も短く、細く、疎であり、上皮の剥離もみられる。筋層も薄く、全体に萎縮が著明である。
参考文献6-1-14より転載)

■3 経腸栄養法の適応
経腸栄養法の適応とされる病態は広く、「腸管が一部でも機能していれば、経腸栄養の適応である」。また、静脈栄養法の絶対的適応以外はすべて経腸栄養法の適応といえる。図ⅥはASPENのガイドラインを若干改変したものである(参考文献6-1-8)。まず、消化管が安全に使えることが大前提である。次にその栄養管理期間を考える。だいたい4週間をめどにして、それ以内の栄養管理期間であれば、経鼻経管栄養法を選択し、4週間以上にわたる栄養管理期間であれば胃瘻または空腸瘻を用いた方法を考慮する。次に胃・食道逆流の有無を考慮する。逆流の危険性がなければ短期の場合、経鼻・胃ルートを、長期の場合は胃瘻を採用し、逆流の危険があれば、短期では経鼻・幽門後ルートを、長期の場合には空腸瘻あるいはPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の瘻孔を利用してそこから長いチューブを空腸の起始部に留置して栄養投与を行う方法(PEG-J)または外科的空腸瘻造設を採用する。
図Ⅵ

図Ⅵ●栄養補給方法の選択
栄養療法を選択する場合には、まず、消化管機能があるかないかが重要であり、消化管機能がなければ(例えば腸閉塞など)静脈栄養の適応であるが、消化管機能があれば経腸栄養を選択する。経腸栄養を選択した場合には次にアクセスルートを考慮しなくてはならないが、それには栄養管理の期間、あるいは胃・食道逆流による誤嚥性肺炎発生の危険性などが考慮されなくてはならない。
参考文献6-1-8をもとに作成)

■4 投与方法
A. 経腸栄養剤の選択
 経腸栄養法を施行するにはまず栄養剤の選択が必要である。栄養剤の一般的な分類を表Ⅰに示した。経腸栄養剤の選択において最も重要なことは病態に合った栄養剤を選択することである。それには個々の栄養剤の組成を十分検討して選択する。病態が安定して、ストレスがほとんどない場合には半消化態栄養剤(LRD)の一般処方群を選択し、ストレス下、耐糖能異常時、腎不全、肝不全あるいは呼吸不全などでは、それぞれの病態に応じた特殊処方の栄養剤を選択する。また、短腸症候群や、クローン病の場合には成分栄養剤の選択もすべきである。それによっておのずと投与方法も決まってくる。わが国では、経腸栄養剤は医薬品と食品に分類されている。食品の場合、微量元素は添加することはできず、原料由来の含有量になっている。そのために含まれるべき個々の栄養組成の含有量にも特に決まったものはない。これに対してヨーロッパでは経腸栄養剤はすべてFSMPs(foods for special medical purposes:特別医療用食品)として厳格な規制の下に各栄養素の含有量も一定範囲で決められていて定期的に検査が施行される。医療保険の適用もある。わが国では近年数多くの経腸栄養剤(食品)が市販されているが、長期に使用する場合には、上記のことを考慮して使うべきである。

1. 天然濃厚流動食
2. 半消化態栄養剤
A.一般処方群
B.疾患別(または特殊)処方群
 ●耐糖能異常時用
 ●呼吸器疾患用
 ●腎不全用
 ●肝不全用
 ●代謝ストレス下用
3. 消化態栄養剤(成分栄養剤

表Ⅰ●経腸栄養剤の分類



B. 経腸栄養法施行に必要な器具
① デカンター
 栄養剤を詰め替えて投与する場合に必要である。ボトルタイプ、バッグタイプあるいはイリゲーターなどがある。デカンターを使用する場合にはオープン・システムで投与しなくてはならないので、細菌汚染に注意しなくてはならない。成分栄養剤はすべてデカンターが必要である。近年、半消化態栄養剤ではデカンターを必要としないバッグ詰めの製品が多く、これらはクローズド・システムで投与できるが、ポンプが使用できない。 経腸栄養法の欠点は経鼻的に栄養チューブを消化管に留置しなくてはならないことである。患者もこれが苦痛のために経腸栄養法を拒否し、また、医師もこのために安易にTPNを選択してしまう。そこで、いかに患者の違和感を最小にするかということを考えて経鼻栄養チューブの選択を行わなくてはならない。まず、できるだけ細いチューブを選択する。一般的なLRDを投与する場合は8Frもあれば十分である。栄養チューブの材質にも注意を払わなくてはならない。経鼻・胃用と経鼻・小腸用があり、先端に錘がついているものがある。経鼻・胃用では錘は必要ないが、留置しやすいようにガイドワイヤー付きのチューブを選択する。先端が盲端となり側孔のあるタイプは最も閉塞しやすい。側孔でも舟状(スプーン状)の注入孔タイプは閉塞しにくい。また、チューブを固定する場合にはエレファント・ノース型(図1)に固定し、毎日絆創膏を交換して皮膚を清潔に保つことはいうまでもない。
図1

図1●エレファント・ノース型栄養チューブ固定法
鼻腔栄養チューブは鼻翼に接しないように固定する。接着テープ幅約1cm,長さ約5cmを用い、先端3cmを縦に分割して使用する。分割しない端を鼻梁に固定し、分割した部分を双方向からチューブに巻きつけて固定し、チューブを下方に向けて鼻翼にチューブが接しないよう固定する。

 病態が安定して、胃・食道逆流の危険がなくチューブの先端を胃内に置いて、間歇的に注入する場合にはポンプは必要ない。しかし、侵襲下や幽門後に注入する場合にはポンプは必須である。また、胃・食道逆流の危険があり、幽門後栄養投与が困難で胃内投与を余儀なくされる場合にもポンプを使用すると逆流を防止することが可能である。いずれにしても経腸栄養法を成功させるにはポンプは必須である。

C. 投与ルート
① 経鼻・胃ルート
 最も一般的なルートであり、技術的にも容易で間歇投与が可能である。チューブの先端の位置確認は必ずX線透視あるいは撮影によって確認する。あるいはチューブから吸引した液体のpHが4以下の酸性であることを確認する。注射器にて空気を送り上腹部でその注入音を聴診器で聞いて確認することがよく推奨されているが、この方法には問題があり、気道や食道下部にチューブが留置されていても上腹部で空気注入音が聞こえることがあるので注意を要する。
② 経鼻・幽門後ルート
 胃・食道逆流の危険がある症例や、早期経腸栄養法を行う場合に選択するルートである。幽門を越えてチューブの先端を十二指腸、あるいはトライツ靭帯を越えて空腸上部に留置させる方法である。チューブの留置方法は若干の技術を要し、先端に錘があり、ガイドワイヤー付きのチューブを使用する。ベッドサイドで留置する場合には吸引液の性状やpHを測定して幽門後に留置する。しかし細い栄養チューブでは消化液を吸引できない場合がある。X線透視下に留置するのが最も確実である。仰臥位でチューブを胃内に進め、水溶性の造影剤を少量使用して幽門輪の位置を確認する。右側臥位としてチューブの先端を幽門輪の手前に置き、約10cmほどガイドワイヤーを引き抜きチューブを進めると先端は容易に幽門輪を通過する。そこでガイドワイヤーを再度先端まで押し進めて、チューブを十二指腸下降脚から水平部、さらにはトライツ靭帯を越えて進める。空腸上部に先端を留置できれば最も理想的であるが、十二指腸の水平部までもっていき、長めに胃内にたるませておくと、蠕動運動でトライツ靭帯を超えて空腸上部まで先端が進むことが多い。内視鏡により留置する方法もあるが、内視鏡を抜くときに留置した栄養チューブも一緒に抜ける場合がある。
③ 胃瘻
 経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)と外科的方法により作成する方法がある。PEGは6-4:PEG(経皮内視鏡的胃瘻増設術)に述べられるので省略する。外科的方法には、Stamm法、Whitzel法、Janeway法などがある。
④ 空腸瘻
 PEGを介してチューブの先端を空腸上部に位置させる方法(PEG-J)および外科的に作成する方法がある。PEGを介する方法の詳細はPEGの項にゆずる。外科的方法は多くは食道がんや膵臓がんあるいは胃がんなどの手術の際に作成されることが多い。多くはWhitzel法に準じて作成される。図Ⅶはわれわれが開発した空腸瘻専用栄養チューブであり、図Ⅷが手術時に留置した完成図である。
図Ⅶ

図Ⅶ●空腸栄養瘻専用カテーテル
われわれが考案した空腸栄養瘻専用カテーテルである。透明部分の10cmが10Frで先端から7cmの部位にノッチがあり、さらに3cmの部位にウィングがある。ウィングからライン接続部分まで約15cmあり12Frの大きさになっている。材質はシリコン。
参考文献6-1-15より転載)

図Ⅷ

図Ⅷ●空腸栄養瘻専用カテーテルの留置完成
トライツ靭帯から約40cmの空腸に縦に約3cmの漿膜・筋層切開をおき、その遠位則で粘膜に小孔を開け、カテーテル先端からノッチまでを腸管内に留置する。腸管内容が漏れないように粘膜孔を3-0絹糸で閉じ、それよりウィングまでを漿膜・筋層でWhitzelタイプに被い、ウィングを腹膜に数針固定して、体外に誘導する。
参考文献6-1-15をもとに作成)

 この方法は手術に併設されるものであるが、さらに簡単で、外套針をガイドとして作成するのでチューブの外径が6Frと細く、詰まりやすいのが欠点である。これらの方法は早期経腸栄養を可能にするもので、手術終了後循環動態が安定していれば、翌日からでも投与可能であり、これによってほとんどの腹部の大手術後でもTPNを必要としない。
参考文献6-1-9

D. 投与速度
 間歇投与は胃内投与が原則である。1日量を3〜4回に分けて投与する。まず最初は1回200〜250mLを約1時間ほどで注入し、特に副作用がなければ500mLを1時間ほどで投与する。持続投与は幽門後に投与する場合で、注入ポンプが必要である。最初は20〜30mL/時の速度で開始して、副作用がなければ12〜24時間ごとに40mL/時、60mL/時、80mL/時と速度を上げていく。24時間持続で投与するので、栄養剤の細菌汚染を防止するためにデカンターは6〜8時間ごとに交換する。

【執筆】大熊利忠氏
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