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第8章各疾患の栄養管理

8-5:重症熱傷

■1 治療方針
 熱傷は、熱による生体表層の組織障害をいう。熱傷がほかの疾患と比べ特徴的なことは、①侵襲の程度が、深度、面積により比較的定量化しやすいこと、②病態がおおむね定型的な経過をたどること、③侵襲の程度は生体に加わる障害の中で最大であり、失われた表皮の修復(多くは植皮による)に多大な時間を要する点である。過大な侵襲、創面からの体液喪失、創傷管理、くり返す手術といった問題があり、栄養管理法の重要性がとりわけ強調されるゆえんである。

A. 熱傷の重症度
 初療時に熱傷深度、面積、気道熱傷の有無、患者背景(年齢、既往歴など)から重症度の判定を行う。まず熱傷深度の判定では、受傷原因(爆発、火炎、熱湯、熱源接触)により初診時の皮膚所見は異なるので、いったん深度判定をした後も、その後の熱傷創面の経過中の観察によりその精度を上げる必要がある。熱傷面積は、初療時は大まかな面積算定を行い、その後詳細な熱傷面積算定を行う。もう1つ予後に大きく関与するのは、患者の年齢、既往症である。以上を総合して重症度を判定する。
 長い時間を必要とする熱傷治療では、年齢に由来する患者体力、受傷前栄養状態、臓器機能、遺伝的背景に由来する侵襲という入力に対する生体反応性が、治療成績に決定的な影響を与える。熱傷は、受傷直後の高サイトカイン血症からの炎症反応、壊死組織への感染のみならず、毎日の創処置、疼痛、くり返す壊死除去植皮術といった熱傷治療自体の侵襲を含め、生体に加わる侵襲の程度は受傷時の重症度から派生し実にさまざまである。初療時の熱傷重症度診断のみならず、経過中の問題点を的確に把握して対応し(手術時期、残存身体機能評価、感染症治療戦略、栄養所用量増減など)、入院時からの間断のない管理・治療を行い、個々の症例に対するテーラーメイドの医療を必要とする。

B. 熱傷の病態
 侵襲学の教科書的な定型的経過をとる。3つの病期に分けられ、表Ⅰに病期、病態、各々の管理法についてまとめた。ただし初療時の輸液不足、早期の感染(受傷時創汚染、減張切開時など)では、明確な利尿期がないまま感染期に移行することは、まま経験することである。熱傷治療の提要は、病態から予測される起こるべき障害を予想し、先手を打って対応し、創閉鎖まで臓器機能を維持することである。往々にして、熱傷初期のショック期の輸液、その後の利尿期のダイナミックな時期を熱傷治療の主体と考えがちであるが、実際はその後の感染症の管理治療、壊死除去術、植皮の生着に至る過程が重症熱傷治療の主体である。その時期の治療のベースとなるのが入室時からの適切な代謝栄養管理である。
表1

表1●熱傷火傷症例の病態に基づく管理法(クリックで拡大します)
長期にわたる熱傷治療管理の一貫した指針を明示したもの。これを基本に各症例ごとの特製を考慮した管理を行う。栄養管理のみを単独に考慮するのではなく、あくまでも全身管理の一貫として取り組む。例えば環境温の調節がなされなければ、いたずらに熱産生が増えエネルギー消費が増す。

■2 栄養管理法
 表Ⅰ下欄に、重症熱傷患者に対する栄養管理の概略を記載した。栄養アセスメントの実施から栄養管理が始まることは、どの疾患でも同様である。その後も患者モニタリングに基づき栄養アセスメントをくり返し、その時々の病態に合致した至適栄養所要量、組成に近づけることが肝要である。熱傷病態の変化に応じた栄養管理を行い、長い経過の中で取りこぼしをしない管理が重要である。そのため管理にNST栄養サポートチーム)を組込むことは、当院の経験でも有効である。
 栄養管理の際には入院時あるいは栄養管理開始時に計算する栄養所要量にこだわりがちであるが(ex.どの公式を使用するか、ストレス係数はいくらか)、例えば、「35歳、男性、爆発による45%(Ⅲ+Ⅱ)熱傷症例。身長170cm、入室時体重65kg、現在60.5kg。受傷2週目までに3回の植皮術施行。3回目の術後4日目39℃の発熱、敗血症性ショックに陥った」患者の入室からの至適栄養所要量が、容易に算出できないことは自明である。よしんば挿管下間接熱量計を装着しREEを測定しても、変動する数値のどれを用いればよいか決めかねる。予測式を参考に栄養管理を開始し、常に、栄養投与という入力に対する出力である血液生化学検査のモニタリングを駆使し評価、勘案し、病態の変化を加味し、そこから明日の栄養療法を決定することになる。早期から栄養管理を開始することと、やみくもに設定投与量に到達させることは別の問題ととらえるべきである。
 積極的栄養管理が必要な熱傷患者は原則は表Ⅱに該当する患者であり、具体的には、成人でⅡ度15%以上、Ⅲ度10%以上、熱傷面積によらず70歳以上、5歳以下の入院症例、気道熱傷、耐糖能障害がある症例、熱傷疼痛、侵襲熱による食欲減退、熱傷による臓器機能低下例などである。

A. 投与エネルギー
 必要エネルギー量の算出には、表Ⅲに示した2つの式がよく用いられる。体重は、健常時もしくは理想体重から求め使用する。計算値で注意を要するのは、広範囲熱傷では、いずれの公式でも計算の係数が大きくなり、とんでもない数字が導かれることである。算出したエネルギー量を実際に投与可能か、利用できるかは別である。ASPENガイドライン(参考文献8-5-1)、ASPENならびに米国Critical Care Medicine学会(SCCM)合同の重症患者栄養管理ガイドライン(参考文献8-5-2,8-5-3)では、可能なら間接熱量測定法によってエネルギー消費量を測定するよう勧めている。基礎代謝(BEE)の1.5倍以上のエネルギー投与量が算出された場合は、漸増法により慎重に投与計画を立て、頻回にモニタリングを行い、実投与量の上限を勘案、その段階での至適投与量を設定する必要がある。いずれにせよ、投与エネルギーの初期の過剰設定には十分に注意が必要である。

B. 組成
① タンパク質
 タンパクの体表からの漏出、異化亢進による体タンパクの崩壊、尿中窒素排泄量増加に対して、熱量投与が必要のみならず十分量のタンパクの投与が必要になる(参考文献8-5-4)。そのタンパク必要量は、中等度熱傷では1.5 g/kg/日程度、重症になれば2.0 g/kg/日となる。非タンパクカロリー/窒素比(NPC/N)では、中等度熱傷120〜100、高度では100以下となる。高容量タンパク質投与の場合は、高齢者、腎機能低下症例では、血清BUN値には十分な注意が必要である。当院ではタンパク質投与を増す必要がある場合には、成人症例ではグルタミン末を1包8gに分包し、必要量に見合うよう適宜投与(通常は胃管より)している。
② 糖質・脂肪
 非タンパクカロリーは、糖質と脂肪の取り分けであるが、開始時は熱傷初期輸液の影響で末梢静脈からのブドウ糖もあり、糖質中心の組成(全熱量の50〜60%)となる。耐糖能低下によりインスリン間歇、持続投与下にも血糖のコントロール困難(当院での血糖コントロール設定値は120〜160 mg/dL)時は、脂肪組成を増量した処方に変更する。経管栄養では、耐糖能障害患者用経腸栄養剤(脂肪含量が40〜50%)、静脈栄養では、脂肪乳剤の増量により対応している。経静脈投与時の注意点は、グルコース投与速度上限5 mg/kg/分、脂肪乳剤投与速度上限0.1 g/kg/時を少なくとも開始当初は守ることである。血糖値、血清トリグリセライド値のモニターが重要である。

C. 投与ルート
 栄養療法が必要な熱傷患者では、可能な限り早期から腸管管理のうえ経腸栄養を開始する。その後の長期にわたる治療経過でも安定して経管経口栄養が行えれば、熱傷創により点滴の刺入部位が制限される点からも有利である。臀部に熱傷創がある場合にも、排便コントロールにより便の性状を整え、定時に浣腸などで排便を促し、その後創面を洗浄している。どうしてもコントロールできない下痢の場合は排便誘導用肛門ドレーンを挿入し、創面および包交材料の汚染を防いでいる。
 静脈栄養については、熱傷例では熱傷創面からの水分喪失により必要水分量が増加するが、これを逆手に取れば、末梢静脈からかなりの量の栄養投与が可能である。感染期(=手術期)の栄養管理は、経管栄養(ときに経口)+末梢静脈栄養の組合わせが、標準的栄養療法である。

D. 早期経腸栄養
 熱傷患者への早期経腸栄養は、合目的であり異論のないところである。熱傷患者の多くは、受診時には腸管機能が維持されており、熱傷が直接に腸管損傷を起こす可能性は少ない。投与経路は、当院では全例胃管投与で開始している。開始は入室後排便処置、排便確認後おおむね12時間〜24時間以内で、投与開始3日目までに経腸から[25×入室時体重]kcal程度を投与している。利尿期に入る受傷72時間頃に、おそらく腸管浮腫等により注入後の胃管からの逆流、下痢などを経験するが、その後はほぼ順調に継続投与可能であり、病態、臓器機能により設定した所要量に向け調節している。ただし、経腸栄養中は、使用抗菌薬の抗菌スペクトルは可能な限り腸内細菌叢に影響を与えないものを選択し、抗菌薬性下痢を防いでいる。

E. 熱傷周術期の栄養管理
 重症熱傷患者では、数回〜10回程度の壊死除去、植皮術が創閉鎖のために必要である。そこで、手術前後の経腸栄養、静脈栄養計画を立て、その間の実栄養摂取量を把握し、周術期期間の栄養摂取量低下を押さえる必要がある。1週間〜10日間隔での手術の中で、前後2日間の絶食があると栄養摂取上少なからぬ影響がある。当院では、非挿管例では絶食は術前日夕、術日昼(つまり丸1日)までとし、その間も10%糖加輸液、3%アミノ酸加維持液で補充するようにしている。術後抗菌薬も、創培養結果と腸内細菌叢への影響を勘案し選択している。また経過が長期にわたる熱傷患者では、前述のごとく、全例NST回診対象患者であり、ICU看護師により栄養週間要約(期間総摂取熱量、日々の摂取量増減、経管経静脈栄養比、タンパク質摂取量、体重、検査データ推移)を作成して、チームの共通認識、抜けのない管理に利用している。

① 入院(受診)する時点ですでに栄養障害が存在
② 入院後の侵襲が過大である
③ ①,②の両方
④ 治療上患者の自由な栄養摂取を制限する
⑤ 入院後の管理がうまくいかない
⑥ それが治療上、QOL、予後に重大な影響を与える

表Ⅱ●積極的栄養介入決定の根拠

ハリス・ベネディクト(Harris〜Benedict)の式
男性 [BEE(kcal/日)=66.47+13.75×体重+5.00×身長〜6.78×年齢]
女性 [BEE(kcal/日)=655.14+9.563×体重+1.850×身長〜4.68×年齢]
BEE(basal energy expenditure、基礎エネルギー消費量)に侵襲度を反映する係数(1.3〜2.0)をかけて算出する。さらに厳密には、発熱1℃で、係数に0.1を加える。
Curreriの式
成人(エネルギー) [20kcal×体重+65kcal×熱傷面積(%)]
小児 [60kcal×体重+35kcal×熱傷面積(%)]
熱傷面積50%まではよく相関する。それ以上では、過剰となるので注意が必要である。

表Ⅲ●熱傷患者栄養所用量予測式



【執筆】海塚安郎氏
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