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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-6:亜鉛(Zn)[zinc]

亜鉛(Zn)[zinc]
 血清亜鉛基準値:66~110μg/dL
 成人の体内には約2 gの亜鉛(Zn)が含まれる.酵素の生化学国際分類上の6大分類すべてに存在し,300種以上の酵素の主要な成分となり,核酸合成,タンパク質消化,タンパク質合成,糖代謝,骨代謝などにかかわっている.また,フリーラジカルによる損傷の防御機能として重要であることがあげられる.体内の亜鉛の約95%以上が細胞内イオンとして存在し,骨格筋に約60%,骨に約30%分布している.細胞外液としては,血液中に全体の約0.1%含まれ,約75~80%が赤血球,約12~22%が血漿中に,約3%が白血球に存在している.血漿中では,約70~75%がアルブミン,約15~30%がα2マクログロブリン,約2%がトランスフェリン,セルロプラスミン,システイン,ヒスチジンなどに結合している.
 日常食からの亜鉛の吸収率は,約30%であり,その吸収過程は,摂取量が多く管腔内の亜鉛濃度が高い場合には,受動的な拡散によって行われ,吸収率が低下し,摂取量が少なく管腔内濃度が低い場合には,亜鉛トランスポーターの機序が優先的に働き,吸収率が高まる.吸収された亜鉛は,アルブミンなどと結合し,門脈系を経て肝臓に取り込まれた後に各器官・組織に運搬される.吸収されなかった亜鉛は,小腸細胞から分泌された内因性亜鉛とともに糞便中に排泄され,その量は,5~10 mgと推定されている.<一方,尿中や汗中の亜鉛排泄量は,食事中の亜鉛量の影響をほとんど受けず,その排泄量は,両者ともに0.5 mg/日程度と推定されている.
 亜鉛欠乏症の臨床症状としては,味覚障害,慢性下痢,低アルブミン血症,汎血球減少,免疫機能障害,神経感覚障害,認知機能障害,成長遅延,性腺発育障害などがあげられる.表1には亜鉛欠乏症の診断基準を示した.
 一方,過剰症は,通常の食事では起こることはなく,サプリメントの過剰摂取で発生する場合がある.
表1

(文献2-6-1より引用)

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