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キーワードでわかる臨床栄養

第9章静脈栄養法

9-3:脂肪乳剤投与速度の上限[upper limit of infusion rate]

■脂肪乳剤投与速度の上限[upper limit of infusion rate]
 人工脂肪粒子リポタンパク化は投与後数分以内に完成する.人工脂肪粒子が加水分解された後,アポリポタンパクC群はHDLに戻り,次々に血中に入ってくる人工脂肪粒子に絶え間なく転送される.しかし脂肪粒子とHDLの数的なバランスからみて,脂肪粒子の数が血中においてHDLのそれを上回った状況下,例えば脂肪乳剤の投与速度が速すぎた場合,HDLからアポリポタンパクの供給を受けられない脂肪粒子が血中に停滞し,高脂血症を招来する.網内系機能を抑制しないためにもこのような状況は回避しなければならない.トリグリセリド・クランプテクニックを用いて検討した結果,人工脂肪粒子が効率よくリポタンパク化され,加水分解される投与速度の上限はトリグリセリドに換算して0.10±0.03 g/kg体重/時となる(参考文献9-3-3,9-3-4).図6は,0.10±0.03 g/kg体重/時と0.3 g/kg体重/時で脂肪乳剤を投与したときの血中トリグリセリド値を示している.この事実からもトリグリセリドの投与速度の上限は
0.15 g/kg体重/時 であることがわかる. 図6●脂肪乳剤の投与速度と血中TG値

図6●脂肪乳剤の投与速度と血中TG値
TGクランプテクニックにより血中TG値がプラトーとなる投与速度が,人工脂肪粒子が効率よくリポタンパク化され,加水分解される上限の投与速度〔0.10±0.03 g/kg体重/時〕である.投与速度が速すぎると脂肪粒子が血中に停滞する.
TG:トリグリセリド
(文献9-3-3をもとに作成)

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