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4-2:エネルギー投与量の算出方法のキーワード

[6] 栄養素の投与エネルギー比率

① タンパク質(アミノ酸
 三大栄養素のうち、タンパク質は酵素系、収縮系、免疫系などのすべての臓器機能の実務者という点で最も重要な栄養素である。タンパク質の合成と崩壊のバランスは微妙であり、合成にはエネルギーを要するが、崩壊、特に糖新生の際には合成に要する1/4の高エネルギーリン酸化物しか産生しない(参考文献4-2-7)。残りはすべて熱となる。したがって、タンパク質をエネルギー源とするのは明らかに無駄である。

a. タンパク質の必要量
 タンパク質の必要量を論じる際には、体タンパクの分布、移行を知る必要がある〔詳しくは3-3:タンパク質代謝を参照〕。最終的な窒素分の排泄は尿中、糞便中、皮膚から行われるが、このタンパク質のturn overはエネルギー摂取も重要で、糖質は筋タンパク合成を促進し、脂質は肝タンパク合成を促すとされている。
 ヒトにおいても無タンパク食を摂取させたときにその排泄が最小となり、タンパク質の必要量が推測できる。無タンパク質食摂取時の窒素排泄量は尿中37mg/kg、便中12mg/kg、外皮から5mg/kg、皮膚からの蒸泄時に2〜3mg/kgで、合計56〜57mg/kg/日の窒素排泄、または0.34gm/kg/日のタンパク質の放出となる(参考文献4-2-8)。なお、さらにいろいろな補正や、低生物学的活性のタンパク質を加味して0.8g〜1.0/kg/日が平均タンパク必要量とされている。
 経静脈栄養法、特にTPN施行時には、肝での制御機構の働きや、再利用するアミノ酸量の増加、さらには、窒素平衡を正に保つために通常より必須アミノ酸の増量が必要などの諸因子のために、250mg/kg/日の窒素量、または1.7g/kg/日のタンパク質の投与が「安全」とされている。

b. NPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)
 アミノ酸の投与量の目安として、非タンパクカロリー/窒素比がある(non-protein calorie/nitrogen:NPC/N)。これは投与されたアミノ酸以外の栄養素(糖質+脂肪)から計算されるエネルギー量を投与アミノ酸に含まれる窒素量(g)で割った比のことで、アミノ酸は十分なエネルギー投与がなければ、いくら投与してもエネルギー源として消費されてしまい、タンパク質が合成されない。つまり、アミノ酸が有効にタンパク質に合成されるために必要な指標として、必要エネルギーに対してどれくらいの窒素(アミノ酸)を最低投与しなければいけないのかを表す。例えば術後などのストレス下では、この比が120〜150、すなわちアミノ酸含有窒素量の120〜150倍のエネルギーがあればタンパク合成が順調に行われるということが証明されている。また、腎不全患者は窒素の排泄が悪くBUN(尿素窒素)が高いため窒素の投与量が制限され、さらにタンパク代謝の亢進を改善するために一般の人よりやや高めのエネルギー投与が必要とされていることから、NPC/N比は300〜500が目安となる。
② 糖質:1日必要量 5〜7g/kg/日
 糖質は、生体内でブドウ糖となり、血糖を維持するだけでなく、身体のほとんどの組織でエネルギー源としてとして作用している。糖質は生体内でインスリンによる調節で解糖系と呼ばれる代謝経路を経て、最終的にTCA回路にてATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるエネルギーを産生することになる。肝臓、脳、赤血球などを除いた組織において、インスリンの作用のもとにこれらの代謝が行われ、特に、中枢神経系のエネルギー源はこの糖質のみであることに注意が必要である。
脂質:1日必要量 0.3〜1g/kg/日
 脂質は、燃焼効率の高いエネルギー源であるだけでなく、ホルモンやプロスタグランジンなどの合成や細胞膜の成分である必須脂肪酸の投与も必要である。血糖に影響を与えないエネルギー源としても重要である。
 飢餓時には、脳や赤血球などではブドウ糖を唯一のエネルギー源として利用しているため、生体内でブドウ糖を供給する必要がある。まず、肝臓や筋肉のグリコーゲンを優先的に分解し、ブドウ糖になって血中に放出される。しかし、その貯蔵量は約300〜400gと少ないため、ほぼ1日で枯渇してしまう。次いで、飢餓時には血糖の低下に応じてインスリンの分泌が低下し、脂肪が分解される(図1)。脂肪の分解により生じた遊離脂肪酸(FFA)は、β酸化によりエネルギーを供給しケトン体を生成する。そのため、飢餓時にはFFAやケトン体の上昇がみられる。ケトン体もエネルギー源となるが、蓄積するとケトーシスになる。
 さらに、飢餓状態が続くと、タンパク質、主に筋タンパクが分解して、アミノ酸を産生し、糖新生や生命維持に必要なタンパク質を作り出す(図1)。そのため、筋肉量や臓器タンパクは次第に減少し、創傷治癒の遅延や免疫能低下が生じ、生体の適応障害を起こす。体タンパクの25〜30%程度を失うと、ついには生命を維持できなくなり、死に至る。この状態をnitrogen death(窒素死)と呼ぶ。
図1

図1●完全飢餓における自己消費

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