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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-8:腸内細菌叢[intestinal bacterial flora]

腸内細菌叢[intestinal bacterial flora]
腸管や皮膚などの外界と接する部位に存在する微生物の集まりは微生物叢と表現され,腸内に存在している集まりが腸内細菌叢(フローラ)である.ヒトの大腸には1,000種類もの細菌が40~100兆存在し,その重量は成人で1~1.5 kgと推察されている.
最近,生体における腸内細菌叢は,食物の消化,胆汁酸の代謝,薬物代謝,腸管感染防御,腸管免疫系の発達などの生理機能へ関与しているため,そのバランスの破綻(dysbiosis)がさまざまな疾患との関連性があることが明確となってきた.代表的なものとして,炎症性腸疾患,慢性腎臓病,非アルコール性脂肪性肝疾患,冠動脈疾患などがあげられる.また,dysbiosisは,生体内への腸内細菌の侵入(バクテリアルトランスローケーション)を起こすことから,重症患者では感染症を制御するためにも適正な腸内細菌叢を維持する重要性が明らかとなってきている.
腸内環境を整える方法として,ビフィズス菌,ラクトバチルス菌など,生体にとって有益な腸内細菌を増殖し,有害な細菌の増殖を抑制することで,宿主の健康に寄与する非消化性成分であるプレバイオティクス(prebiotics)や生体にとって有益な細菌そのものを指しているプロバイオティクス(probiotics)を用いることやプレバイオティクスプロバイオティクスを併用するシンバイオティクス(synbiotics)の利用があげられる.適正なマイクロバイオーム(細菌叢)を維持することの重要性が認識されつつある.

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