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キーワードでわかる臨床栄養

第2章栄養素とその代謝

2-3:分岐鎖アミノ酸(分枝アミノ酸)[branched-chain amino acid]

分岐鎖アミノ酸(分枝アミノ酸)[branched-chain amino acid]
 アミノ酸のうち,炭素骨格が枝分かれしているバリン,ロイシン,イソロイシンを分岐鎖アミノ酸という.BCAAとあらわすことが多い.食品中の必須アミノ酸のうち,BCAAの占める割合は約50%と高い.
 食事中のタンパク質に含まれるアミノ酸は,小腸から吸収され門脈を経て肝臓へ運ばれる.肝臓ではアミノ酸が代謝されるが,分岐鎖アミノ酸は利用できないため(分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素がないため),全身の組織に運ばれる.筋肉は,取り込んだアミノ酸を体タンパク質に合成および分岐鎖アミノ酸の代謝を行い,グルタミン,アラニンなどのアミノ酸を血中に放出する(図2).
分岐鎖アミノ酸の代謝には,2-オキソ酸デカルボキシラーゼが必要であるが,この酵素が先天的に欠損または著しく活性が低下している疾患にメープルシロップ尿症がある.血漿および尿中で,バリン,ロイシン,イソロイシンとこれらの代謝産物である2-オキソ酸の増加がみられるため,治療には分岐鎖アミノ酸を除去したミルクを使用する.
 血中の分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸(AAA:フェニルアラニン,チロシン)の割合をフィッシャー比という(フィッシャー比=BCAA/AAA).健常成人のフィッシャー比は約3.5程度であるが,肝硬変非代償期では肝機能の低下に伴い,タンパク質やアミノ酸の代謝異常が出現し,1.0以下を示すようになり,この状態を改善するには分岐鎖アミノ酸製剤の治療がなされる.
図2

図2●分岐鎖アミノ酸の代謝

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