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キーワードでわかる臨床栄養

第12章在宅栄養管理

12-3:人工的水分・栄養補給法(AHN)[artificial hydration and nutrition]

人工的水分・栄養補給法(AHN)[artificial hydration and nutrition]
 AHNとは,一般的に経管栄養静脈栄養のことをさす.人生の最終段階には十分な栄養をとり入れることができなくなり,徐々に飢餓状態に陥るが,栄養療法によって寿命を延伸することが可能である.経管栄養〔経鼻胃管・瘻管栄養(胃瘻・腸瘻など)〕や高カロリー輸液によって栄養補給と水分補給を行えば,時には年単位で寿命を延伸することができる.栄養補給なしで水分補給だけなら,およそ数週間単位となり,水分補給もないと数日単位の余命になる.
 人生の最終段階と診断されても,家族には「回復するのでは」という思いや願いがある.その際に「本当に人生の最終段階なのか?」,「本人にとってAHNが益なのか害なのか?」をチームで考えることが重要である.人生の最終段階でなければ,適切な栄養管理により経口摂取が可能となり,AHNから離脱できることもある.一方,人生の最終段階であれば,過剰なAHNによる栄養療法により,患者を苦しめることもある.
 2002年に提唱されたASPENのガイドラインでは,消化管が安全に使えるならば,経管栄養を推奨している.経鼻胃管は,簡単に必要十分な栄養補給ができるが,経口摂取の妨げになり,苦痛があるために長期間の使用には適さない.2週間程度に1回の交換が必要である.胃瘻をはじめとする瘻管栄養は,使用期間が4週間以上の経鼻胃管の患者が適応となる.瘻管栄養では必要十分な栄養補給ができ,薬剤投与も同じルートで行える.15分程度の経鼻内視鏡を使った手術が必要となる.瘻管栄養により,会話や食事が制限されることはなくなるが,4~6カ月に1回の交換が必要である.
 消化管が使用できない場合の静脈栄養は,短期間の場合には末梢静脈栄養での水分・ミネラルの補給が中心となり,高エネルギーを投与することができないため,使用期間が2週間未満の患者が適応となる.2週間以上の場合は,持続的に高カロリー輸液を投与できる中心静脈栄養になる.経鼻胃管に比べて誤嚥性肺炎の危険性は低くなるが,カテーテルを介して敗血症を起こすことがあり,介護施設での実施が困難なこともある.心機能・腎機能が低下している場合の過剰な静脈栄養が,その病態を悪化させる危険もある.
 人生の最終段階の判断に悩んだ場合は,経管栄養であれば,まずは経鼻胃管を開始し,必要栄養量を充足しても「害」がないか,一定期間継続することは本人にとって「益」があるのかを判断し,「害」であれば減量もしくは中止,「益」であれば苦痛の少ない瘻管栄養に変更することが望ましいと考えられている.

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