① T細胞の働き
T細胞はT細胞抗原レセプター(TCR)を介して抗原を特異的に認識することができる。TCRにはαβ型とγδ型の2つがある。
抗体レパートリーを作り出す機構がTCRレパートリーを作り出す機構としても働いている。すなわち、①抗原との結合に関与する遺伝子セグメントの組換え(gene rearrangement)、②遺伝子セグメント組換えの際に起こる鋳型遺伝子に存在しない塩基の挿入(junctional diversity)、が多様なTCRレパートリーを構築する。再構成された遺伝子によりコードされるTCRα鎖とTCRβ鎖が無作為にペアを作ると考えると、その組み合わせは10
10通りになる。
抗体は可溶性分子として抗原に直接結合することができるのに対し、TCRはCD3複合体と会合して細胞表面に存在し
抗原提示細胞上のMHCに結合した抗原ペプチドを認識する。TCRがMHCに結合した抗原ペプチドを認識すると、その刺激は細胞内のCD3複合体に伝えられ、CD3ポリペプチド(特にCD3ζとCD3η)の細胞内ドメインが核へシグナルを伝達する。TCRの抗原結合部位には、
抗体で見出されているsomatic mutation(体細胞変異)はみられない。その理由は、
抗体は変異を起こして抗原との結合性が強くなると抗原の排除に有利であるが、TCRは変異を起こして自己MHCと強く結合するようになると自己細胞を破壊する危険があるためではないかと推測される。
② T細胞の分化
T細胞は骨髄の造血幹細胞に由来し、末梢リンパ組織の大多数のT細胞は胸腺で分化する。胸腺細胞にはCD4
−8
−(5〜10%)、CD4
+8
+(75〜80%)、CD4
+8
−(10%)、CD4
−8
+(5%)が存在し、最も未熟な胸腺細胞(プロT細胞)の段階でTCRβ遺伝子の再構成が起こる。CD4
−8
−細胞(プレT細胞)はTCRβ鎖とプレTα鎖の会合したプレTCRを保持する。次に、CD4
+8
+細胞の段階でTCRα遺伝子の再構成が起こり、形成されたTCRα鎖がプレTα鎖に置き換わってTCRを発現する(CD4
+8
+TCR
+細胞)。自己MHCと結合するTCRを発現するCD4
+8
+TCR
+細胞は胸腺上皮細胞上のMHC分子により分化成熟が誘導されるが、自己MHCに親和性がないCD4
+8
+TCR
+細胞は選択されず死滅する(ポジティブセレクション)。また、逆に自己MHCと強い親和性をもつCD4
+8
+TCR
+細胞も胸腺内で負のシグナルを受けて処理される(ネガティブセレクション)。その結果、胸腺細胞の95%は胸腺内で死滅し、残りの5%が自己MHC
+抗原ペプチドを認識しうるT細胞として選択される。同時に、CD8またはCD4のいずれか一方の発現が消失してCD4
+T細胞またはCD8
+T細胞となり、末梢リンパ組織へ移行する(
図5)。
③ T細胞サブセットの機能
CD4
+T細胞はさまざまな調節因子(サイトカイン)を産生し免疫応答を制御することからヘルパーT(Th)細胞と呼ばれる。これまでTh細胞は産生するサイトカインの種類によりTh1細胞とTh2細胞に大別されていた。Th1細胞はIL-2やIFN-γを産生して細胞性免疫を促進し、Th2細胞は
IL-4やIL-5を産生して
抗体産生を促進する。いずれか一方のTh細胞が過剰に作用すると自己免疫疾患やアレルギーを発症する危険があるため、免疫防御にはTh1/Th2細胞バランスを適切に維持することが重要である。
しかしながら、Th1/Th2細胞だけでは説明できない現象が見出され、近年になって新たなTh細胞サブセットとして、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22を産生するTh17細胞(
参考文献5-1-3)、TGF-β、CTLA-4、
IL-10を産生するTreg細胞(
参考文献5-1-4)が同定された(
図6)。Th17細胞の産生するサイトカインは細胞内・細胞外の細菌や真菌の感染防御に働く。一方、IL-17の過剰産生は自己免疫疾患や炎症性腸疾患を増悪することが知られている。これに対し、Treg細胞のサイトカインは免疫応答を抑制する作用があり、Th1細胞やTh17細胞の過剰な活性化を制御すると考えられている。
CD8
+T細胞は標的細胞を認識して傷害することからキラーT(Tc)細胞と呼ばれる。
NK細胞はMHCクラスⅠ分子の消失や構造変化が起こった標的細胞を認識して傷害するのに対し、Tc細胞はMHCとともに提示された抗原(ウイルス抗原や
がん抗原)を特異的に認識して傷害する。
図6●ヘルパーT(Th)細胞のサブセット
従来は、Th細胞はTh1とTh2の2つのサブセットからなると考えられていた。近年になって感染防御に重要なTh17細胞や過剰な免疫応答を抑制するTreg細胞が同定され、Th1/Th2/Th17/Treg細胞の多様な相互作用の存在が明らかにされた。
IL:interleukin、TGF-β:transforming growth factor-β、GATA3:GATA transcription factor 3、RORγt:retinoic acid-related orphan receptor-γt、Foxp3:forkhead box p3、LTα:lymphotoxin-α、CTLA-4:cytotoxic T-lymphocyte antigen-4
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