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第8章各疾患の栄養管理

8-7:脳卒中

 脳卒中診療のポイントは、①CT・MRIの24時間稼働、②rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法(発症3時間以内の血栓溶解療法)、③外科治療、④血管内治療、⑤臨床病型に応じた内科治療、⑥入院当日から二次予防開始、⑦早期離床・早期リハビリテーション(以下リハビリ)、⑧感染対策、⑨栄養管理である。これらを多科・多職種によるチーム医療で実践するために脳卒中専門病棟(stroke unit(参考文献8-7-1))を立ち上げてクリティカルパス参考文献8-7-2)を活用する。
 意識レベル、呼吸 (数、深さ、型)、循環(血圧、脈拍)、体温などのバイタルサインのチェック、パルスオキシメーターによる酸素飽和度測定あるいは動脈血液ガス測定、全血算、血液生化学検査、検尿、心電図などのデータをもとに血圧管理、循環管理、呼吸管理(低酸素血症の是正)、血糖管理(高血糖の是正)、体温管理(高体温の改善)、電解質管理、栄養管理などの全身管理を行う。PaO290mmHgあるいはSpO295%以下のとき酸素を投与する。水分バランスは尿量+500mL、発熱時は1℃の上昇あたり150〜300mLの補液を増やすが、心不全や脳浮腫の増悪に注意する。高血糖では速効型インスリンで治療(150〜200mg /dL 以下)する。38℃を越す場合にはアセトアミノフェン(カロナール®)などの解熱薬やクーリングで常温に保つ。栄養状態不良や大酒家の脳卒中患者には、来院時にビタミンB1を100mg静注する。ビタメジン®1バイアル中にはビタミンB1は100mg(男性の必要量1〜1.5mg/日)、B6は100mg(1.4mg/日)、B12は1 mg(2.4μg/日)が含まれているので、1バイアルを補液の中にいれるとよい。葉酸が不足している場合もあるので、投与する場合もある。
 くも膜下出血や脳出血では外科治療の適応を即座に判断する。脳梗塞では内科的治療が中心となり、抗血栓療法を主軸に脳保護療法や抗脳浮腫療法を併用する。抗血栓療法では注射薬による急性期治療とともに、入院当日や翌日から内服薬による二次予防を開始するため意識障害や嚥下障害の症例では経鼻胃管を挿入する。
■2 栄養管理
 脳卒中患者は、①意識障害、②嚥下障害や運動障害、③症候進行症例、④感染症の併発、⑤脳浮腫(頭蓋内圧亢進による嘔吐)、⑥手術必要例、⑦認知症の合併、⑧脳卒中に伴う消化器合併症、⑨抗血栓療法に伴う消化管出血の併発、などの多くの問題がある。さらに高血圧症、糖尿病、脂質異常症を合併している場合が多く、特に糖尿病合併例ではネフローゼ症候群を合併することもある。これらの基礎疾患も考慮して栄養管理を行わなければならず、大変苦労することが多い。
 疾患にかかわらず原則、入院36時間以内に経腸栄養を開始する必要があるため、当院では栄養評価アルゴリズムに従い栄養評価を行い、入院当日あるいは入院翌日までに栄養手段・内容が決定される(図Ⅰ)。経口摂取ができない場合には積極的に経管栄養を入院翌日に可能な限り開始する。嚥下が可能になってきたら経口訓練食を開始する。ワルファリンが開始された場合には、ワルファリン食を選択する。また経腸栄養ではビタミンKが多いものはワルファリンの効果が減弱するので使わない。なお神経内科グループの週3回の回診に管理栄養士(1〜2回)と薬剤師(3回)が参加することによりベッドサイドでウォーキングカンファレンスを行っている(図Ⅱ)。なお栄養管理の目標は経口摂取であり、安易な内視鏡的胃瘻造設は慎むべきである。
 脳卒中では誤嚥性肺炎に代表される嚥下性肺疾患を併発することが多い。感染症を併発したときほど栄養の増量が必要であるが、多くの症例ではすぐに絶食となり、抗菌薬の投与とともにTPNが開始されることが多く、MRSA腸炎や偽膜性腸炎を併発してくる。可能な限り経腸栄養を続行し、絶食にしなければならない場合にはGFO療法を行う。普段から嚥下性肺疾患を併発しないように口腔ケアを行う。
図Ⅰ

図Ⅰ●嚥下障害アルゴリズム(クリックで拡大します)
Japan coma scale:JCS(日本昏睡尺度)

図Ⅱ

図Ⅱ●神経内科の回診風景



【執筆】橋本洋一郎氏、佐藤悦子氏
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