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8-10:炎症性腸疾患のキーワード

[3] 炎症性腸疾患とビタミン、ミネラル[vitamin , mineral]

 摂取量の低下や消費量の増加があるとビタミン・ミネラル・微量元素が欠乏する。十二指腸や小腸に病変がない潰瘍性大腸炎では、欠乏はまれである。しかし、サラゾピリン®やペンタサ®などの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤との相互作用で吸収が低下する。特に葉酸欠乏が起こりうるので補充が必要となる。プレドニゾロン投与時には、カルシウムの尿中排泄が促進されるため骨粗鬆症のリスクが増大する。炎症性腸疾患の活動度が高いと脂溶性ビタミンであるビタミンAビタミンEが低下する。 ビタミンB1は糖質が燃焼してエネルギーを出すときに必須のビタミンである。欠乏すると脚気、Wernicke脳症、乳酸アシドーシスなどの重篤な欠乏症状を呈する。特に、輸液管理中の場合には、点滴内に十分なビタミンB1を補充しなければならない。
葉酸
 血清葉酸値が低下と、好中球過分葉、尿中ホルムイミノ-L-グルタミン酸の増加、大赤血球出現、骨髄像における巨赤芽球出現がみられる。葉酸1mg/日の経口投与が有用である。血清葉酸値が4.4ng/mL未満の場合は、葉酸5〜20mgを経口投与する。血清や赤血球の葉酸が正常であっても、ビタミンB12が欠乏していると葉酸の利用が障害されるので骨髄像に巨赤芽球が出現する。コメには葉酸が含まれているので日本食を摂取している限りにおいては欠乏症は起こりにくいとされている。食習慣の欧米化によるコメ離れが葉酸欠乏のリスクを高めている。葉酸は緑黄色野菜や肝臓に多く含まれている。葉酸拮抗薬(メトトレキサート、ペンタミジン、ピリメタミン、トリアムテレン、トリメトプリム)、アミノサリチル酸、催眠・抗痙攣薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、バルプロ酸、グルテチミド)、コルヒチン、サイクロセリン、イソニアジド、メフェナム酸、メトホルミン、フラジオマイシン、ニトロフラン誘導体、フェナセチン、炭酸水素ナトリウム、コレスチラミン、エストロゲン、経口避妊薬およびアルコール摂取により血清葉酸値は低下する。成人の所要量は200μg/日であるが、妊娠初期に400μg/日の葉酸を摂取すると神経管閉鎖不全による奇形(無脳症、脳瘤、二分脊椎など)の発生が減少するとされている。 血清ビタミンB12値が260pg/mL未満の場合はビタミンB12投与が必要である。1,000μg/月、皮下注射する。菜食主義者では卵や乳製品の摂取が禁止されているので欠乏症が起こる。経口摂取されたビタミンB12は、まず唾液中のRタンパク質(ハプトコリン)と結合し、十二指腸でRタンパク質が分解されたのち、胃の壁細胞から分泌された内因子と結合して内因子-B12複合体を形成する。この複合体は回腸末端部において内因子受容体と結合し、吸収される。回腸の粘膜細胞に吸収されたビタミンB12はトランスコバラミンⅡと結合して血中に放出され肝臓に到達する。胃全摘術後、抗壁細胞抗体、抗内因子抗体が存在するとビタミンB12の吸収は低下する。アミノグリコシド、アミノサリチル酸、フラジオマイシン、抗痙攣薬(フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン)、コレスチラミン、シメチジン、コルヒチン、メトホルミン、ペンタミジン、ラニチジン、トリアムテレン、経口避妊薬服用でビタミンB12は低下する。
 クローン病では、ビタミンB12が吸収される回腸末端部に病変が多発するので、しばしばビタミンB12欠乏症がみられる。 内因性ビタミンDの活性代謝産物である1,25-(OH)2-D3が小腸からのカルシウム吸収を促進する。ビタミンDビタミンD結合タンパクと1:1のモル比で結合して血中を循環する。ビタミンDは肝で水酸化されて血中の主成分の25-OH-D3になり、さらに近位尿細管で1α-水酸化酵素により水酸化されて血中カルシウムを調節する活性型の1,25-(OH)2-D3またはカルシウムに影響を与えない24,25-(OH)2-D3になる。
 1,000IU/日を経口投与する。血清カルシウム値が6.5mg/dL以下では、ビタミンD投与やカルシウム製剤投与が必要である。低アルブミン血症ではイオン化カルシウムが正常でも血清カルシウム値はみかけ上、低値になる。臨床的にはPayneの式、
補正Ca濃度(mg/dL)
   =Ca実測値(mg/dL)+〔4〜血清アルブミン濃度(g/dL)〕
で補正する。
亜鉛
 潰瘍性大腸炎では活動期が長く続くと亜鉛欠乏症が起こる。持続する下痢や腸管に瘻孔がみられると血清亜鉛値は低下する。血清亜鉛値が30μg/dL以下の場合は、亜鉛欠乏である。亜鉛の60〜70%はアルブミンに結合し、残りのほとんどはペプチドアミノ酸と結合している。1日に必要な摂取量は10〜15mgである。亜鉛欠乏では、顔面・会陰部の皮疹、口内炎、舌炎、脱毛、爪変化、腹部症状(下痢や腹痛、嘔吐)や発熱などがみられる。創傷治癒の遅延や成長障害、免疫力低下、精神症状(うつ状態)がみられることもある。また、味覚低下(味覚障害)もしばしば出現する。サイアザイド、ループ利尿薬、ジスルフィラムなどの薬剤投与時には高値となり、グルココルチコイド、クロフィブラート、経口避妊薬服用時には低下する。クローン病では持続する頻回の下痢症状がみられるので、潰瘍性大腸炎と比べて亜鉛欠乏の頻度が高い。硫酸亜鉛として220mg/2日に1回、経口投与する。亜鉛補助を目的としてブイアクセル®というサプリメントを投与することがある(表1)。

 100g中1包中
(7g)
 100g中1包中
(7g)
エネルギー 386kcal 27kcal亜鉛 71.4mg 5.0mg
タンパク質
(うちL〜グルタミン
30.0g
(21,430mg)
2.1g
(1,500mg)
セレン 714μg 50μg
ビタミンA
(レチノール当量)
1,500μg 105μg脂質 1.0g 0g
炭水化物 65.7g 4.6gビタミンC 2,143mg 150mg
ナトリウム 157mg 11mgビタミンE 286mg 20mg
カリウム 757mg 53mg水溶性食物繊維 1.4g 0.1g
リン 100mg 7mg食塩相当量 0.4g 0.03g

表1●ブイアクセル®一般成分表

 完全静脈栄養を実施している場合にはセレン欠乏が起こりうる。成人男性では1日45〜60μg、成人女性では1日40〜45μgが必要である。グルタチオンペルオキシダーゼの構成成分であり、抗酸化作用で組織細胞の酸化を防ぎ、ユビキノンの合成を通じて生体酸化を調節している。セレンが欠乏すると、下肢の筋肉痛、心筋症、爪床部白色変化、AST・ALT・CPKの上昇が起こる。
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