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第8章各疾患の栄養管理

8-10:炎症性腸疾患

■はじめに
 炎症性腸疾患は原因が明らかな感染性腸炎と原因が不明な潰瘍性大腸炎・クローン病に大きく分けられる。食事指導や栄養管理は原因が明らかでない炎症性腸疾患に治療において重要である。しかし、活動期病変の鎮静化や寛解状態の維持における「栄養管理」の重要度は多少異なる。潰瘍性大腸炎では、寛解維持期における「食事管理」は重要である。しかし、活動期においては「薬物療法」が優先され「栄養療法」はサポーティブな効果にとどまるとされる。クローン病では、寛解導入を目的とした「初期治療」においても「寛解維持」を目的とした治療においても有用性が示されている。この稿では、潰瘍性大腸炎とクローン病の病態および栄養療法の位置づけを解説する。
■1 潰瘍性大腸炎の治療方針
A. 疾患の概要と症状
 潰瘍性大腸炎は、主に20〜30歳以下の若年成人に多くみられる。大腸にびまん性のビランや潰瘍がみられる非特異的慢性的炎症性腸疾患である。最近では、発症年齢の若年化傾向があり、小児の潰瘍性大腸炎も増加している。大腸粘膜が傷害されるため血便や粘血便がみられ、下痢や腹痛、発熱、貧血などもみられる。関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、虹彩炎、尿路結石、胆石などの全身性の合併症がみられる。原因は不明であるため対症療法が行われている。病変の広がりから①直腸炎、②左側大腸炎、③全大腸炎、④区域性大腸炎に分類され、症状が落ちついている緩解期と血便や腹痛などの症状がみられる活動期に分けられている。また全身症状がほとんどみられないかきわめて軽微な場合を軽症、頻回の粘血便・水様便があり発熱、頻脈、赤沈値亢進がみられる場合を重症、軽症と重症の中間の臨床像を呈する場合を中等症に分類している(表Ⅰ)。
 厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班から2010年度に、軽症・中等症・重症・激症に分けて、潰瘍性大腸炎の治療指針が上梓されている(図Ⅰ)。重症や劇症の場合には、入院治療が必要であり、全身管理を行う。腸管の安静をはかるために絶食とし静脈栄養法で管理する。大量下血や敗血症のためショック状態に陥ることがあるので、完全静脈栄養を選択する。重症の場合は、プレドニゾロンの経口あるいは点滴静注(40〜80mg、1〜1.5mg/kg)を行う。経口投与が可能な場合には5-ASA錠(ペンタサ®など)1.5〜4.0gまたはSASP錠(サラゾピリン®)3〜4gを投与する。ペンタサ®やステロイドの注腸剤を試みることもあるが、排便回数が増加する場合には中止とする。注腸療法は腹痛が強い場合や巨大結腸症が疑われる場合には適応とならない。発熱や白血球数増多があるときには、広域スペクトル抗菌薬を短期間使用する。ステロイド投与に奏功しない場合は、血球成分除去療法やサイクロスポリン持続静注療法を考慮する。劇症例では、経静脈的栄養補給を行い、プレドニゾロンの強力静注療法または動注療法を行う。重症および劇症例では、中毒性巨大結腸症や大腸穿孔が急に起こることがあるので、緊急的な外科治療を常に念頭におくべきである。重症または劇症の場合には、1〜2週間で治療効果判定を行いながら治療法の変更を考慮する。
図Ⅰ

図Ⅰ●平成22年度潰瘍性大腸炎の内科治療指針(クリックで拡大します)
(厚生労働省特定疾患:難治性腸管障害に関する調査研究、平成22年統括、分担研究報告書、p.59-67、2011年3月)

重症中等症軽症
①排便回数6回以上重症と軽症との中間4回以下
②顕血便(+++)(+)〜(〜)
③発熱37.5℃以上(〜)
④頻脈90/分以上(〜)
⑤貧血Hb10g/dL以下(〜)
⑥赤沈30mm/時以上正常

表Ⅰ●潰瘍性大腸炎の重症度分類
(厚生労働省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班 平成5年度研究報告書、pp.90-92, 1994)

  1. 軽症の③、④、⑤の(〜)とは37.5℃以上の発熱がない、90/分以上の頻脈がない、Hb10g/dL以下の貧血がない、ことを示す。
  2. 重症とは①および②のほかに全身症状である③または④のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする。軽症は6項目すべてを満たすものとする。
  3. 上記の重症と軽症との中間にあたるものを中等症とする。
  4. 重症の中でも特に症状が激しく重篤なもの激症とし、発症の経過により、急性激症型と再燃激症型に分ける。激症の診断基準は以下の5項目をすべて満たすものとする。

    1)重症基準を満たしている。
    2)15回/日以上の血性下痢が続いている。
    3)38℃以上の持続する高熱がある。
    4)10,000/mm3以上の白血球増多がある。
    5)強い腹痛がある。



B. 栄養療法の適応
 潰瘍性大腸炎における栄養療法の有用性は限定的である(表Ⅱ)。血便と下痢が激しいときや巨大結腸症のリスクがあると考えられる場合には完全静脈栄養を行い、腸管安静と栄養補給をはかる。経腸栄養療法は、緩解導入を目的として行われることは少ないが、完全静脈栄養法を実施すると緩解導入までの期間短縮と在院日数を短縮することができる(表Ⅱ)。潰瘍性大腸炎では、小腸に病変がないことが多いので、小腸機能が障害されていることは少ない。したがって、消化吸収障害を伴うことは少ないので、栄養障害をきたすことはまれである。重症期や劇症期を乗り越すことができれば、厳密な栄養管理の必要性はないといえる。緩解導入後に経口摂取が不足し低栄養状態に留まっている場合には、自然流動食、半消化態流動食、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤などの栄養剤を投与することもある。栄養剤を投与する場合には、乳糖を含有しない栄養剤を選択する。潰瘍性大腸炎で栄養素の欠乏が問題となることは比較的少ないが、副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)投与が継続された場合はカルシウムが尿中から喪失するので骨粗鬆症のリスクが高まること、5-アミノサリチル酸製剤投与時には葉酸をはじめとするビタミン欠乏がおこらないかどうかを念頭に置いておく必要がある。下痢が続くと微量元素のひとつである亜鉛が消化管から喪失するので亜鉛欠乏のリスクが高くなる。さらには、食事制限の期間が長期化する場合にも栄養素や微量元素の欠乏に注意する。

完全静脈栄養初期治療食事摂取と比べて緩解導入や手術回避の効果は高くない
経腸栄養初期治療治療効果はステロイド治療の補助的役割
栄養状態の改善効果はある
経口栄養初期治療有効性を示すデータはない
癌化予防のために葉酸摂取が有用であるとする報告あり
n〜3系脂肪酸が活動性およびステロイド必要量の減少に有用

表Ⅱ●潰瘍性大腸炎における栄養療法の意義

■2 クローン病の治療方針
A. 疾患の概要と症状
 クローン病は、非特異的慢性的炎症を惹起する原因不明の疾患であり、回盲部を中心とする小腸に病変の主座が存在することが多い。線維化や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症性病変が特徴であり、潰瘍は小腸や大腸を含む口腔から肛門までの全消化管のいずれの部位にも発症する。発症年齢は、潰瘍性大腸炎よりもさらに若年傾向にある。腸管と腸管および腸管と腹壁、肛門周囲などに瘻孔が発症する。難治性痔瘻や肛門周囲膿瘍を合併することも少なくない。腹痛、下痢、発熱などの症状で発症し、体重減少、全身倦怠感、貧血などの栄養障害に起因する症状がみられることもある。活動期には、関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、虹彩炎などの症状を合併することがあり、胆汁酸性下痢が持続するによって胆石症のリスクが高まり、脂肪吸収障害がシュウ酸結石を主体とする尿路結石症を発症させる。
 クローン病の重篤度は、下痢回数や腹痛などの臨床症状と腸閉塞や消化管穿孔を疑う画像診断などから評価するが、軟便・下痢の回数、腹痛の程度、一般状態の善し悪し、体温37.8℃以上の日が何日あるかを、7日間記録して評価することが一般的である。これらの項目に、さらに関節炎・関節痛、虹彩炎・ぶどう膜炎、結節性紅斑・壊疽性膿皮症・アフタ性口内炎があるか、裂孔・痔瘻・肛門周囲膿瘍などの瘻孔があるかの項目を加え、止痢薬(ロペミン®)を使っているかどうか、腹部腫瘤の有無などを追加し判定し、「CDAIアセスメントスコアー」を算出する(表Ⅲ)。220点以上である場合を重症、150点以下を鎮静化と判定する。本邦では、IOIBDアセスメントスコアー(表Ⅳ)も用いられている。

表Ⅲ

表Ⅲ●CDAIアセスメントスコアの記入例(クリックで拡大します)

① 腹痛
② 1日に便回数6回以上または粘血便
③ 肛門部病変
④ 瘻孔
⑤ その他の合併症
⑥ 腹部腫瘤
体重減少
⑧ 発熱(38℃以上)
⑨ 腹部圧痛
⑩ 貧血(ヘモグロビン10g/dL以下)

表Ⅳ●IOIBDアセスメントスコア
・各項目に対してそれぞれ1点とし、合計点で表す
・0または1点を緩解状態とし、点数が増えるごとに重症と判断する



B. 栄養療法
 クローン病では、栄養管理が「寛解導入」療法の選択肢の1つである点が、潰瘍性大腸炎の活動期の治療法とは異なっている。クローン病では栄養障害を伴うことが多いばかりではなく、食事性因子が腸管病変の悪化の原因となるからである。経口的に摂取された食事内容は、小腸に流入し未消化のタンパク抗原が腸管壁を中心とする過剰な免疫反応の原因となり、大腸内では食物成分と脂肪が腸内細菌の影響で有害な有機酸や化学物質となり腸管病変を増悪させる。n-6系脂肪酸は炎症反応を増悪させる。消化吸収機能の負荷を回避するためにアレルギー反応を起こす可能性のあるタンパク抗原を含む食事や栄養剤を禁止し、消化・吸収に複雑な過程を必要とし脂肪消化吸収障害を惹起しやすい経口脂肪を制限または禁止する。すなわち、栄養管理上、低脂肪をめざす必要があるので、中心静脈栄養を用いた栄養管理か脂肪分をほとんど含まない成分栄養剤(エレンタール®)(脂肪含有量0.6%)を選択すべきである。下痢が頻回であり、腹痛がひどく、腸閉塞が疑わしい場合や腹腔内膿瘍が疑われる場合には、エレンタール®の経腸投与が不耐のことがある。その場合は完全静脈栄養法をまず選択し、鎮静化につれて経腸栄養療法に移行させる(図Ⅱ)。
図Ⅱ

図Ⅱ●平成22年度クローン病内科治療指針(クリックで拡大します)
厚生労働省特定疾患:難治性腸管障害に関する調査研究、平成22年統括、分担研究報告書、p.69-77、2011年3月

① 栄養療法の進め方
 厚生労働省・研究班の指針には、経腸栄養剤成分栄養剤(エレンタール®)でも消化態栄養剤(ツインライン®等)でもよいとされているが脂肪制限を優先的にする場合にはエレンタールを選択すべきである。経鼻チューブの先端を十二指腸〜空腸上部に留置して栄養剤を投与する。高濃度の栄養剤を投与すると下痢が起こりやすいので、低濃度に調整したものから開始し、徐々に濃度や投与量を漸増し、数日で維持量に移行する。1日の維持投与量として理想体重1kgあたり30kcal以上を投与する。病状と患者の受容性やQOLに配慮して適宜投与量の増減や経口法の併用を行ってもよい。エレンタール®を用いる場合には10〜20%脂肪乳剤200〜500mLを週1〜2回点滴静注し、必須脂肪酸欠乏症の防止をはかる。
 完全静脈栄養療法によって、病勢が鎮静化し始めたらエレンタール®による栄養療法に移行する。投与方法には、経口投与、経鼻経管投与、胃瘻(PEG)よりの経腸投与があるが、クローン病では胃瘻部分がケロイド状になったりクローン病の皮膚病変が出現したりすることがあるので可能な限り胃瘻造設は避け経鼻経管投与を行うべきである。アミノ酸に起因する特異的な臭いがあり、経口摂取が行えないこともある。オレンジジュースやパイナップルジュースを混ぜると特有の臭みが消えるので、経口摂取が可能となる。
② 小児の場合
 小児では栄養療法をまず考慮する。治療効果が十分でない場合や食事指導を含む栄養管理を受け入れてもらえない場合には、ステロイド、免疫調節薬などの投与を検討する。食事指導内容を含めた栄養療法について主治医が熟知していない場合には、栄養管理の専門家に相談すべきである。
③ 在宅栄養療法の場合
 在宅栄養療法では、寛解維持療法として、1日摂取カロリーの半分量以上に相当するエレンタール®を投与する。エレンタール®を選択する場合には、栄養剤に脂肪がほとんど含まれていないので、「経口摂取」の「食事」のバリエーションが広がり、食事摂取における満足度を高めることができる。すなわち、エレンタール®は「治療薬」として受け入れることが重要である。「脂肪制限」および「食事内容制限」が治療に必要なのはクローン病に限られた治療方針ではなく、糖尿病や慢性腎不全、高血圧の時の食事制限然りであることを指導することも重要である。短腸症候群や小腸にびまん性に狭窄病変を有する小腸機能不全症に陥っている場合には、在宅中心静脈栄養法を考慮する(表Ⅴ)。

完全静脈栄養初期治療緩解導入に有用であるが、食事摂取で再燃する
痔瘻閉鎖 痔瘻閉鎖に有効であるが、食事摂取で再発する
術前 栄養状態が改善される
周術期の合併症が低減される
成長障害の治療 小児・思春期の発育改善
経腸栄養初期治療
緩解導入に有用であるが、食事摂取で再燃する
コンプライアンスが不良のことがある
成長障害 栄養状態が改善される
小児においても有用である
経口栄養初期治療効果カロリー食が用いられるが、再燃が多い
成分栄養剤を用いると良好なことがある
制限食が有効なことあり

表Ⅴ●クローン病における栄養療法の意義

■3 栄養アセスメントと食事管理
 潰瘍性大腸炎およびクローン病では小腸や大腸に病変があるので、活動期には腸管安静を第一とする。食事摂取により腹部膨満や腹痛の増強、さらには下痢の増悪、血便の悪化がみられるので食事摂取を控えるため栄養不良に陥りやすい。腸管から出血したり、タンパク漏出が起こるので、栄養不良による体重減少に加えて、貧血や低アルブミン血症が増悪する。クローン病の小腸病変に起因する消化吸収障害が主訴であることもある。炎症反応の亢進によりアルブミン合成が阻害され、低アルブミン血症が進行する。炎症によって不足する栄養必要量を増量しながら、薬剤と食事との相互作用を考慮しながら栄養管理を行わなければならない。炎症性腸疾患で低栄養状態を惹起する主な原因をまとめて表Ⅵに示す。カルシウムセレン葉酸、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12亜鉛マグネシウムビタミンAビタミンDビタミンEなどの不足には十分注意する。栄養障害のリスクがある場合には、高エネルギー、高タンパク食(クローン病ではアミノ酸が望ましい)を少しずつ頻回に摂取することが望ましく、急性期では低繊維食を選択する。寛解期には小腸や大腸の狭窄病変がなければ食物繊維を含有する献立を工夫する。食物繊維の摂取開始にあたっては、水溶性繊維で病性の増悪がないことを確認してから増加をはかる。大腸にしか病変がない潰瘍性大腸炎においても乳糖不耐症を合併している頻度は高いので、増悪期には乳糖を含む栄養剤や食品はとくに避けるべきである。

経口摂取量の減少腹痛狭窄、粘膜の炎症、下痢
食思不振TNF-αなどのサイトカイン
味覚異常亜鉛欠乏、メトロニダゾール服用
消化障害腸管瘻孔、短腸症候群
吸収障害炭水化物吸収上皮の傷害、細菌増殖
脂肪吸収上皮の傷害、胆汁酸欠乏(回腸末端切除や傷害)、細菌増殖、短腸症候群
タンパク出血、下痢、瘻孔からの分泌
栄養消費量の増加活動期のクローン病では栄養必要量が増加している
薬剤との相互座用スルファサラジンは葉酸の吸収と代謝に影響をおよぼす
TNF〜αはタンパク代謝に影響をおよぼす
ステロイドはミネラルとタンパク代謝に影響をおよぼす
栄養素の欠乏ビタミンADEKCB12葉酸
カルシウムマグネシウムセレン亜鉛

表Ⅵ●炎症性腸疾患でみられる低栄養の原因



C. 栄養療法・栄養指導ポイント
 炎症性腸疾患では活動期の腸管の安静と寛解維持期の栄養管理を基本に治療を組み立てなければならない。栄養療法・食事指導の要点は、下記のとおりである。
① 栄養投与の目安
 腸管粘膜の修復には、1日あたり25〜35kcal/理想体重1kgのカロリーが必要である。体重減少が明らかな場合には40kcal/理想体重1kgを考慮する。タンパクは1.0〜1.5g/kg必要であり、急性期では低残渣食が推奨される。寛解状態に移行したら、明らかな狭窄がなければ、水溶性の食物繊維投与は差し支えないと考えられている。乳酸菌や酪酸菌が多い状況下では、水溶性繊維は大腸で代謝され、酪酸が産生されるので大腸粘膜の栄養源になる。
 潰瘍性大腸炎では、クローン病に比べて、栄養素の欠乏が問題になることは少ない。しかし、5アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)投与時や食事制限の期間が長期化した場合には、栄養素や微量元素の欠乏が起こりやすくなる。
脂質摂取
 経口摂取による脂肪を20g/日を越えないようにする。ただし、必須脂肪酸欠乏を防ぐために、魚介類に含まれるn-3系脂肪酸を中心に摂取する。n-6系脂肪酸の含有量が多い動物性脂肪は制限する。
③ 摂取する食品群
 病勢を悪化させる食品群の摂取を制限する。食事性タンパク抗原がクローン病では病勢の悪化に関与しているからである。患者すべてに共通の増悪性の食物タンパクは明らかとされていないので、個々の症例の経過を観察しながら指導する。
④ 腸内細胞叢の改善
 腸内細菌叢を改善するよう努力する。酪酸産生菌や乳酸産生菌の増加を促すために、プロバイオティックス、プレバイティックス、シンバイオティックス作用を考慮した食事献立を作成する。
⑤ 微量栄養系の摂取
 ミネラルビタミンや微量元素の欠乏に注意する。脂肪制限が食事指導の基本であることもあり、脂溶性ビタミン欠乏が潜在的に存在していることを念頭に置く。プレドニン投与時にはカルシウムの尿中への排泄過多が起こり、骨粗鬆症の悪化に拍車をかけている。糖質過多の食事摂取になりやすいので、ビタミンB1欠乏が起こりやすい。ビタミンB12の吸収部位である回盲部に病変が多く、また切除されていることが多いので、ビタミンB12欠乏が起こりやすい。下痢症状が一般的であり、亜鉛欠乏が起こりやすいので、亜鉛を含有する食事内容を指導する。エレンタール®に食事摂取を併用している場合には、セレン欠乏は起こりにくい。
⑥ 食事療法に対する意識
 慢性疾患では食事制限を伴うことが少なくない。炎症性腸疾患、とくにクローン病では「食事療法」自体が「治療」であることを認識させ、「イヤイヤながらする食事制限」から「自ら進んで行う食事制限」に考え方を変えることによりQOLは飛躍的に改善することを理解させる。

【執筆】福田能啓氏、小竹淳一朗氏、福田修久氏、橋本学氏、山本憲康氏、奥田真珠美氏
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