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第3章栄養素とその代謝

3-8:食物繊維

■1 腸管における免疫システム
 食物繊維について述べる前に、腸管機能で特に重要な役割である腸管免疫について触れる。腸管は粘膜および粘液をもって外界からの細菌や毒素の体内への進入を阻止しており、腸管には体全体の約半分のリンパ球、免疫グロブリンが存在している。絶えず膨大な種類と量の異物(細菌、ウイルス、食物タンパクなど)にさらされている腸管は、これらの取り込みの善し悪しを判断する機構を備えており、“第2の脳”ともいわれている。食品のように安全なものと病原性のある細菌を識別し、生命維持に必要なもののみを受諾・分解して体内に取り込み、体内に入ると生命を危険にさらす可能性のある病原細菌を可及的に排除している(参考文献3-8-1)。この仕組みこそが腸管における重要な免疫反応である。
 腸管免疫系を構成しているのは腸間膜リンパ節(mesenteric lymph nodes:MLN)、腸粘液層、パイエル板、上皮間リンパ球(intraepithelial lymphocytes:IELs)、小腸上皮細胞、孤立リンパ濾胞第(solitary lymphoid follicles)(5-2:消化管と免疫Key Word[2]参照)、粘膜固有層、粘膜固有リンパ球(lamina propria lymphocytes:LPLs)、形質細胞(plasma cell)、マクロファージ、樹状細胞(dendritic cell:DC)、好酸球、肥満細胞である(参考文献3-8-2)。IEL、LPLに存在するCD4T cell(ヘルパー/インデューサー)、CD8T cell(サプレッサー/サイトトキシック)数は、全免疫系細胞のおおよそ60%をも占めるといわれ、経口的に体内に取り込まれる多量の抗原に対して、後述する分泌型IgAとともに生体防御の最前線として重要な役割を演じている。
 前述の異物取り込みの善し悪しを判断する免疫機構は、2つの相反する抗原特異的免疫応答によってなされる。すなわち、正の免疫反応として的確な免疫応答を誘導し(分泌型IgAの誘導とIELによる細胞障害活性)、また負の免疫反応として抗原の種類や生体への有用性に応じた無応答(寛容)を誘導(粘膜誘導型経口免疫寛容)する(図Ⅰ)(参考文献3-8-1)。
図Ⅰ

図Ⅰ●腸管免疫機構の役割参考文献3-8-17より引用)

■2 絶食やストレスによる腸管粘膜の萎縮による影響
 以上のように免疫上重要な働きをもつ腸管においては、腸管を使わないこと、すなわち絶食や手術、外傷などのストレスによる腸管粘膜の萎縮が問題となる。何らかの理由により絶食状態が続くと腸管絨毛が萎縮し、人体最大の免疫組織といわれる腸管関連リンパ組織(gut associated lymphoid tissue:GALT)の機能、すなわち生体防御上重要となるパイエル板における分泌型IgAの産生能が低下し、かつリンパ球による細胞障害活性も損なわれる(参考文献3-8-3〜3-8-5)。腸粘膜の萎縮に伴い腸管免疫能が低下すると、腸管内のエンドトキシンやバクテリアが門脈血中、リンパ管、後腹膜経由で全身に移行する、いわゆるbacterial translocation(以下BT)のリスクも発生し、腸管のバリア機能が破綻する。エンドトキシンや細菌が門脈経由で肝に到達すると、肝内で腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor以下TNF)などの炎症性サイトカインの産生増加に伴って活性酸素やフリーラジカルが過剰産生され、正常な肝細胞や胆管細胞をも障害されて、肝機能障害が惹起される(参考文献3-8-5〜3-8-7)。
 腸管粘膜萎縮に対しては、栄養療法の適切な選択(腸管機能が正常な場合のTPNの非実施)と早期の経腸(以下EN)・経口栄養の開始、さらに中心静脈栄養(以下TPN)実施中でも肝機能障害の予防目的で、活性ビタミンの投与やcyclic TPNの導入、さらには後述する水溶性食物繊維などの可及的な投与が重要といえる。
 ENはTPNに比べ生理的であるといわれているが、食物繊維を含有しない経腸栄養剤での長期管理で腸絨毛の萎縮が惹起され、水溶性食物繊維(グアーガム分解物)の投与がこれを改善させることが報告されている(参考文献3-8-8)。
■3 食物繊維による腸管機能の維持
 さて、腸管機能の指標としてdiamine oxidase(以下DAO)が注目されている。DAOはornithine decarboxylase(ODC)とともに小腸粘膜の絨毛上部において高い活性を示し、その役割としてポリアミン代謝を調節することで小腸粘膜上皮の増殖を制御する。すなわち、DAOはputrescine(プトレスシン)濃度を抑制し、ODCはその濃度を上昇させてポリアミン濃度を制御する結果、小腸粘膜上皮の増殖に重要な役割を果たしている(参考文献3-8-9,3-8-10)。さらに、小腸組織中のDAO活性が血中DAO活性と有意に相関することがLukらによって報告された(参考文献3-8-11)。
 そこで、われわれはDAOを指標として①絶食TPN管理、②TPN管理下EN移行期、③EN維持期、④EN+水溶性食物繊維(以下soluble dietary fiber:SDF)、⑤食事摂取、のそれぞれ異なる栄養管理下における血中のDAOを測定し、消化吸収ならびに腸管免疫に重要な役割を演じる小腸の健常度(integrity)について検討を行った。その結果、経消化管栄養の開始に伴い血中DAO活性は上昇し、EN維持期以降は絶食TPN管理時に比して有意な活性の回復を認め、腸管の健常度の回復が示唆された(表Ⅰ)(参考文献3-8-12〜2-8-14)。経腸栄養維持期に投与したSDFは難消化性高発酵性のグアーガム分解物(サンファイバー®:太陽化学、四日市)で、ビフィズス菌や乳酸菌により選択的に資化(利用)され酪酸などの短鎖脂肪酸に分解され、腸内フローラの改善および腸管の健常度の維持に有用とされている(参考文献3-8-15)。食物繊維投与時には非投与のEN維持期とは有意差は認めなかったが、その値は上昇してEN移行期に比べ有意差を認め、萎縮した小腸粘膜の健常度がSDFの投与によって回復しうることが示唆された。
 さて、がん化学療法など特殊病態下では、抗がん剤による消化器症状の出現がしばしば認められる。小児固形腫瘍(神経芽細胞腫)に投与するシクロホスファミド(エンドキサン®)(以下CPM)は小腸粘膜障害を惹起し、悪心、嘔吐や腹痛、下痢、食思不振の原因となる。そこで、CPM投与による小腸粘膜障害の診断、ならびにSDFの腸粘膜保護効果を検討する目的で血中DAO活性の測定による評価を行った(参考文献3-8-12,2-8-13)。対象は神経芽細胞腫stageⅡ(n=9)、stageⅣa(n=10)で、stageⅡ症例では、CPM(300mg/m2)の投与前後に血中DAO活性を測定し、CPM投与による腸粘膜障害時の診断における有用性を検討した。stageⅣa症例は進行例でCPM投与量は3〜4倍の900〜1,200mg/m2であり、CPM投与10日前よりSDF(1g/kg/日)を連日投与し、その効果を検討した。その結果、SDFを投与しなかったstageⅡ症例ではCPM投与翌日から血中DAO活性が著しく低下し、これは腸粘膜障害による消化器症状〔投与後3日目より(+)〕の出現よりも早期に認められた。一方、SDFを前投与したstageⅣa症例では、CPM投与量が3〜4倍であるにもかかわらず血中DAO活性の低下は認められず、SDFによって小腸粘膜の健常度が維持された(表Ⅱ)(参考文献3-8-12,3-8-13)。
 以上より、高発酵性の水溶性食物繊維は腸管の健常度を維持することで、腸管免疫の恒常性に重要な役割を演じる特殊栄養成分であると考えられた。
 1日に必要なエネルギー量、三大栄養素はもちろんのこと、疾患に応じた栄養素の強化も重要で、ビタミン、微量元素、抗酸化物質や食物繊維などの作用を十分に理解、認識することが肝要といえる。

栄養管理血中DAO活性 (units/l)p value
vs. TPNvs. TPN&ENvs.EN
TPN4.73±1.02NS<.0001
TPN&EN5.46±1.48NSNS
EN6.84±1.18<.0001NS
EN + SDF7.62±0.67.0002.0075 NS
PO8.82±1.26<.0001.0003.0107

表Ⅰ●栄養管理法の相違に伴う血中DAO活性の変動
血中DAO活性(平均±SD)
NS:not statistically significant. (有意差なし)、EN+SDF vs. PO : NS.
SDF:水溶性食物繊維(0.5g/kg/day)、PO: 経口摂取
参考文献3-8-13より引用)

神経芽細胞腫stage Ⅳ a(n=10)
シクロフォスファミド(900〜1200mg/m2
SDF前投与(1g/kg/日)
神経芽細胞腫stage Ⅱ(n=9)
シクロフォスファミド(300mg/m2
SDF前投与(〜)
pDAO activity
(units/L)
p value
(vs. pre/1day)
pDAO activity
(units/L)
p value
(vs. pre)
4.95 ± 0.546.76 ± 1.52
14.43 ± 0.51NS / 〜1.96 ± 0.57.0431
35.21 ± 0.94NS /.02773.46 ± 1.36.0431
55.49 ± 0.16NS /.04313.50 ± 2.87NS
75.06 ± 0.38NS / NS7.93 ± 2.37NS
145.18 ± 0.45NS /.04647.05 ± 1.86NS

表Ⅱ●がん化学療法下における血中DAO活性の推移(n=19)
NS:not statistically significant. (有意差なし)、SDF:水溶性食物繊維
参考文献3-8-13より引用)



【執筆】田中芳明氏
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