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第3章栄養素とその代謝

3-6:微量元素

 体重1kgあたり1mg以下、もしくは体内貯蔵量がよりも少ない金属を微量元素(金属)としている。微量元素は多くの生理作用に関与している。主な関連酵素と生理作用を表Ⅰに示す(は生理作用上重要な金属であるため、あえて微量元素に含めた)。現在までに報告されたTPN(中心静脈栄養)施行中の微量元素欠乏症は表Ⅱ参考文献3-6-1〜3-6-6)に示すが、注目すべきは亜鉛欠乏症(亜鉛)の発症までの期間がほかの微量元素のそれに比較して短い点である(参考文献3-6-7)。
 表Ⅲに各種の微量元素について報告されている至適投与量の参考値を示す。微量元素製剤投与時には過剰投与にならないように注意が必要である。
 セレンは中毒域が1mg/日であり、投与安全域が狭く注意を要する。マンガンは胆汁を介して排泄されるため、胆汁排泄障害のある症例では投与量を勘案する必要がある。また、マンガンは脳内蓄積によるParkinson様症状の出現やMRI検査のT1強調画像で淡蒼球に高信号域を認める報告がなされ(参考文献3-6-8)、微量元素製剤のマンガン含有量は以前の20μmolから2001年には1μmolに減量されている。
 次に最近話題の抗酸化に関係の深い微量元素とその作用について述べる。

微量元素関連酵素・関連物質生理作用
ヘモグロビン、フェリチン、ヘモシデリン、ミオグロビン、ヘム酵素、フラビン酵素酸素受容体、組織内呼吸
亜鉛カルボニックアンヒドラーゼ、アルカリホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼAおよびB、アルコールデヒドロゲナーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ などタンパク代謝、脂質代謝、糖代謝、骨代謝、創傷治癒促進
抗酸化作用
セルロプラスミン、モノアミンオキシダーゼ、シトクロムオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ など造血機能、骨代謝、結合織代謝
抗酸化作用、神経機能、色素調節機能
セレングルタチオンペルオキシダーゼ、種々のセレノプロテイン抗酸化作用、抗がん作用
クロム耐糖因子糖代謝、コレステロール代謝、結合織代謝、タンパク質代謝、抗酸化作用
コバルトビタミンB12造血
ヨウ素甲状腺ホルモン組成の代謝
マンガンピルビン酸カルボキシラーゼ、アルギナーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ など骨代謝、糖代謝、脂質代謝、生殖能、免疫能、抗酸化作用
モリブデンキサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、亜硫酸オキシダーゼ尿酸代謝、アミノ酸代謝
硫酸・亜硫酸代謝

表Ⅰ●微量元素の関連酵素と生理作用参考文献3-6-22より引用)

微量元素発現までの期間欠乏症状
通常2〜3年以上貧血、運動機能・認知機能の低下
無力性顔貌、注意散漫、神経質、学習能力低下
亜鉛14〜104日顔面や会陰から始まる皮疹
口内炎・舌炎・脱毛・爪変形
下痢・発熱、味覚障害、食欲不振など
半年以上白血球減少・貧血・骨粗鬆症
セレン1カ月筋肉痛・心筋症・爪床部白色変化
クロム3年以上耐糖能異常体重減少・末梢神経障害
代謝性意識障害・窒素平衡の異常
マンガン2年以上発育障害・代謝性障害・血液凝固能
低下・毛髪の赤色化
モリブデン1年半以上頻脈・多呼吸・中心暗点・頭痛・
嘔吐・嘔気、 夜盲症

表Ⅱ●TPN施行中の微量元素欠乏症参考文献3-6-22より引用)

微量元素成人小児
2.0mg/日20〜200μg/kg/日
亜鉛5.0mg/日40〜60μg/kg/日
0.3〜1.6mg/日20〜50μg/kg/日
セレン30〜200μg/日2〜7μg/kg/日
クロム5〜50μg/日0.14〜0.2μg/kg/日
ヨウ素70〜140μg/日1〜15μg/kg/日
マンガン0.05〜2.2mg/日1〜55μg/kg/日
モリブデン5〜200μg/日0.25μg/kg/日

表Ⅲ●微量元素の投与量参考文献3-6-22より引用)

■抗酸化と微量元素
 近年、抗酸化あるいはアンチエイジングという言葉がよく聞かれる。酸化ストレスは活性酸素を代名詞としてよく知られるようになってきており、生体の老化に関与する。
 酸化ストレスはわれわれが地球上で生活するうえで避けて通れないストレスであり、体の中で酸素から容易に活性酸素(O2●〜:スーパーオキシドアニオンラジカル)が生成される。しかし、抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)により過酸化水素まで不均化され、さらにカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼにより水と酸素まで無毒化される(図Ⅰ)。
 SODに関しては、マンガン亜鉛が、グルタチオンペルオキシダーゼについてはセレン、さらにカタラーゼにはといった微量元素がこれらの酵素活性に必要である。
図Ⅰ

図Ⅰ●酸化の制御と臓器障害の発生(クリックで拡大します)
H2O2:過酸化水素、O2●〜:スーパーオキシドアニオンラジカル、OH:ヒドロキシラジカル、
NO:一酸化窒素、ONOO〜:ペルオキシナイトライト、OOH:ヒドロペルオキシラジカル
iNOS:誘導型NO合成酵素
参考文献3-6-23より引用)

A. 酸化ストレスによる疾患の発生と微量元素の役割
 持続的かつ高度の酸化ストレスは臓器障害に引き続き、糖尿病、動脈硬化、心疾患、がん、肝炎・肝硬変、炎症性腸疾患、肺気腫など多くの慢性疾患の元凶となる。
 一例として耐糖能異常(糖尿病)と酸化ストレスにまつわる微量元素の機能について述べる。
 高血糖は血管内でglycation(糖化作用)を進行させ、血管内皮細胞や酵素、ホルモンなどのタンパク質を変性させ、酸化ストレスが惹起されて種々の臓器障害を招くが、セレンなどの微量元素の欠乏はこの酸化ストレスをさらに悪化させる(参考文献3-6-9)。TGF-β1(transforming growth factor-β1)は糖尿病ラットの腎糸球体におけるカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼ活性を低下させ、脂質過酸化を亢進させる。Reddiらは(参考文献3-6-10)、セレンの欠乏はTGF-β1 mRNAの発現を増加させることで酸化ストレスを悪化させるため、セレンの補充投与によりTGF-β1を減少させて抗酸化酵素のmRNAの発現を増加させ、その結果、酸化ストレスを軽減して組織障害の抑制が可能であることを明らかにした。Kowluruら(参考文献3-6-11)は、セレンの投与による抗酸化療法が、微小血管のアポトーシスの抑制によって糖尿病性網膜症の進展を抑制することを報告している。また、2型糖尿病患者の多くでは血清亜鉛の低下が認められ、亜鉛クロム、またそれらの同時投与はいずれも、糖尿病患者における過酸化脂質産生を抑制し、抗酸化作用を発揮することも報告されている(参考文献3-6-12〜3-6-14)。Daviesら(参考文献3-6-15)は、加齢とともに血中クロム濃度は低下し、その保持能の低下が糖尿病や心・血管障害の発生に繋がると報告している。Andersonは(参考文献3-6-16)、クロムがインスリンレセプターの数を増加させて、インスリンの細胞への結合を促進させ、またインスリンレセプターキナーゼ活性を増加させてインスリン感受性を高めることを報告した。実際に、クロムの補充投与は1型、2型糖尿病や妊娠糖尿病、ステロイド誘発糖尿病などの病態を改善させると報告している。また、炎症性サイトカインであるTNF-α(tumor necrosis factor-α)はインスリン感受性やインスリン作用を阻害するが、Jainら(参考文献3-6-17)はクロムの投与は、高濃度の糖下ならびに過酸化水素処理による酸化ストレス下の培養細胞中のTNF-α濃度およびその分泌を抑制し、さらに、過酸化脂質濃度の上昇も阻止することを明らかにした。これらの報告は、糖尿病患者に対するクロム投与による糖質代謝の改善や抗酸化作用の新たな分子生物学的メカニズムのエビデンスとなることを示している。
 正常な状態では活性酸素は容易に消去されるが、生体内抗酸化システムを上回る過剰な酸化ストレスが持続的に生体に加わると、臓器障害は進行する。肝に持続的な炎症が存在する慢性肝炎などでは、本来タンパクと結合して存在するなどの遷移金属がイオンの形で存在するようになる。これら遷移金属イオンを触媒としてフェントン反応が加速されると、過酸化水素から大量のヒドロキシルラジカルが産生され、脂質過酸化反応の連鎖が惹起される(図Ⅰ)。これにより肝内で高度の酸化ストレスが持続して炎症が遷延化し、線維化が進行し、肝硬変に至ると考えられる。また、炎症が増強してiNOS(inducible NO synthase、誘導型NO合成酵素)が活性化されるとNO(一酸化窒素)が過剰産生され、これと活性酸素(O2●〜)との反応によりペルオキシナイトライト(ONOO)などの生体内分子を容易に損傷する活性酸素種が産生され、発がんなど臓器障害につながる(図Ⅰ)。

B. 食事中の抗酸化成分による酸化ストレスの消去
 野菜や茶、肉などの食材からビタミンCE、カテキン、コエンザイムQ10およびβカロチンといった抗酸化物を摂取する食習慣は、これら活性酸素種の消去を担う生体内抗酸化システムを補充するうえで重要と考えられる。
 ポリフェノールの抗酸化作用が注目されており、このうち緑茶抽出カテキンは強い抗酸化作用をもっていることが報告されている(参考文献3-6-18)。筆者はこの点に注目し、微量元素、抗酸化ビタミンに加え緑茶カテキンを配合した抗酸化濃厚流動食を開発し、ラットを使用した試験により興味深い結果を得ている(参考文献3-6-19〜3-6-21)。また、慢性肝機能障害を呈する胆道閉鎖症術後症例に対して、緑茶カテキンの投与が酸化ストレス傷害を軽減し、病態の改善に有用であることも報告した(参考文献3-6-24)。今後、さまざまな疾患での臨床データが得られることを期待している。

【執筆】田中芳明氏
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