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第1章:栄養不良とその結果

1-2:栄養不良とその結果

■1 栄養不良
 栄養不良(malnutrition)とは、必要栄養量の摂取が不適切または栄養成分のアンバランスなどが原因で身体機能が損われる一連の状態の総称で、低栄養(undernutrition)と栄養過剰(overnutrition)がある。本項では特に低栄養(undernutrition)と、それがもたらす悪影響について概説する。
 栄養不良(malnutrition≒undernutrition)は、食事摂取不足あるいはストレス(手術、外傷、疾病)などに起因する代謝変化によって起こり、体組成や機能異常を来し、究極には死に結びつくこともある。栄養不良の患者は合併症が多く、入院期間が長くなり、医療費の増大にもつながるため、その認識と対応は重要である。
■2 栄養不良の種類と診断
 栄養不良は詳しく調べればかなり多くの患者が該当するが、日常診療では見過ごされることも多く注意が必要である。栄養不良の判定は栄養アセスメントにより行われるが、1-1:栄養不良の定義に詳しく述べられている。
 栄養不良患者には、慢性的に食事摂取が不十分でタンパクとエネルギーが共に不足するmarasmusタイプと、急性のストレス後に相対的にタンパクが不足するkwashiorkorタイプがあり、総称してprotein energy malnutrition(PEM)と呼ばれている。一般的にmarasmusの方が予後は良好である。臨床的によくみられるのはmarasmus性kwashiorkorである。栄養不良の原因は食思不振、上部消化管狭窄などによる食事摂取の不足や消化・吸収障害、ストレスなど多くの因子がかかわっている。著しい羸痩(るいそう)のある栄養不良は一見して気がつくが、詳細な栄養アセスメントではじめて分かるような栄養低下は認識されにくい。栄養不良を診断する栄養アセスメントは多岐にわたるが、その理由は単一や数個のアセスメント項目では栄養状態を正確に把握することは不可能だからである。臨床の現場では最近の体重減少と食事摂取量の調査を行い、加えてアルブミンやコリンエステラーゼ値など生化学検査も参考にして栄養不良をスクリーニングする。栄養スクリーニングについてはいくつかの簡単なアセスメント項目を組み合わせて行う方法もあり、詳細は1-5:栄養スクリーニングを参照されたい。栄養スクリーニングで栄養不良あるいはそのリスクがあると判定された場合は、詳細な栄養アセスメントを行う。こちらについては1-6:栄養アセスメントに詳細が記されている。  TPNの開発によって栄養の重要性が認識され、栄養評価が行われ始めた1980年代に病院におけるいろいろな疾患、年齢層での栄養不良患者の頻度が調査された。対象患者の種類や栄養評価の方法が異なるのでばらつきはあるが栄養不良患者の頻度は20〜50%とかなり多いことが示された。さらに入院時に栄養不良と認められた患者は合併症のリスクが高く、栄養サポートを受けない場合はさらに悪化することが認められた。
■4 栄養不良の原因
 食物摂取が不十分なために起こる飢餓状態(marasmus)が主な原因で、これに消化・吸収障害やストレスによる代謝異常(とくにkwashiorkor)が加わると急速に悪化する。食事摂取の低下は食思不振、咀嚼不能や上部消化管狭窄、嚥下障害などが主な原因であるが悪性腫瘍など疾患そのものによることもある。
■5 栄養不良の臨床的影響
 栄養不良は病気に悪影響を及ぼし、死を早める危険がある。栄養低下患者は無気力となり治療への積極的な取り組みが失われる。体重減少が起こり、筋肉の消耗により術後の早期離床遅延、呼吸器系合併症などを来しやすい。
 したがって、栄養不良は病気の回復に悪影響を与え、手術の術後合併症の発生率が高くなり、著しい場合は死亡率も高くなる(栄養不良と合併症・死亡率)。合併症が多くなれば、当然入院期間は延長し(栄養不良と在院日数)、治療費は高くなる(栄養不良と医療費)。
 栄養不良に伴う治療成績の低下や経済的負担は適切な栄養管理によって防止することが可能である。栄養状態の系統的なアセスメントを行い、栄養不良あるいはそのリスクのある患者を把握し、栄養治療を行うことにより治療成績を高め、経済効果が期待できる。
図1

図1●栄養不良の原因とその結果(クリックで拡大します)



【執筆】大谷順氏、曽田益弘氏
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各章目次 第1章:栄養不良とその結果 第2章:侵襲に対する生体反応 第3章:栄養素とその代謝 第4章:各栄養素の必要量と投与量 第5章:栄養と免疫、および生体防御機構 第6章:経腸栄養法 第7章:経静脈栄養法 第8章:各疾患の栄養管理 第9章:高齢者の栄養管理 第10章:食事・調理の科学 診療報酬の算定方法(抜粋の要約) 略語一覧 参考文献一覧
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